
相続に関する悩みは、税金だけでなく「誰にどう分けるか」「家族が揉めないか」など多岐にわたります。
特に不動産中心の資産構成では、分割の難しさや納税資金の確保が大きな課題となります。
「うちは仲が良いから大丈夫」
「まだ元気だから先の話」
そう思っている方ほど、いざという時に「争族(そうぞく)」に巻き込まれやすいのが現実です。
問題を未然に防ぐには、目先の節税策に頼る「相続対策(点)」ではなく、家族の想いとライフプランを踏まえた**「相続計画(面)」**が重要です。
この記事では、FPの視点から、**「資産を減らさず、家族の絆を守るための7つのステップ」**を、具体的なケーススタディを交えて解説します。
目次
「相続対策」と「相続計画」は似て非なるものです。
「生命保険で非課税枠を使う」「生前贈与をする」といった個別のテクニック。これだけでは全体のバランスが崩れることがあります。
「家族にどうなってほしいか(想い)」を軸に、誰に何を渡すか、納税資金はどうするか、二次相続まで見据えてトータルで設計すること。
相続を成功させるには、テクニックの前に**「計画(全体像)」**を描くことが不可欠です。
相続計画の第一歩は、「家族会議」です。
親の資産状況、子供たちの生活状況、そして「実家をどうしたいか」という本音を共有しましょう。
この「ギャップ」を埋めるのが相続計画です。
次に、すべての資産を一覧化(棚卸し)します。
特に重要なのは**「不動産評価」**です。
この2つには乖離があります。「評価額では公平に分けたつもりでも、時価では不公平だった」という事態を防ぐため、両方の視点で資産価値を把握しましょう。
相続は家族構成によってリスクが異なります。特に注意が必要な2つのケースについて解説します。
ケースA:子どもがいない夫婦の相続
「子供がいないから、全財産は配偶者にいく」というのは誤解です。
親や兄弟姉妹にも相続権が発生するため、遺言書がないと、**「自宅の名義の一部が義理の兄弟に移り、住み続けられなくなる」**といったトラブルが起きます。
ケースB:二次相続(配偶者死亡後)が心配な家族
「一次相続(父→母)」では配偶者控除で税金がかからなくても、「二次相続(母→子供)」で多額の税金が発生し、子供たちが苦しむケースが多いです。
資産を以下の4つに分類し、「分けやすい形」に整えます。
特に「分けにくい不動産」は、元気なうちに売却して現金化(換価分割)することも、争族を防ぐ有効な手段です。
「誰に何を渡すか」を決めます。不動産の分割方法は主に3つです。
同時に、「小規模宅地の特例」(同居親族などが自宅を相続する場合、評価額を80%減額できる制度)が使えるか確認しましょう。これが使えるかどうかで、税額は数千万円単位で変わります。
相続で揉める最大の原因は、「法定相続分通りにきっちり分けること(平等)」が、必ずしも「家族全員の納得(公平)」ではない点にあります。
例えば、以下のようなケースです。
この状況で、遺産をきっちり「半分ずつ」に分けることは、数字上は「平等」ですが、長女から見れば「不公平」に映るかもしれません。 逆に、実家に住んでいる長女だけに実家を継がせようとすると、資産価値のバランスが崩れ、今度は長男の遺留分を侵害して「代償金」が必要になるケースもあります。
相続は、単なる数字の割り算ではありません。 **「過去の経緯(介護や援助)」や「これからの生活(誰が家を守るか)」**を含めて話し合い、全員が腹落ちする「公平な着地点」を見つけることが、真の円満相続への鍵です。
相続税は現金一括納付が原則です。「資産はあるけど現金がない」という事態(黒字倒産)を防ぐため、以下の準備をします。
計画の仕上げは、その意思を法的に確定させることです。
ここが、手続きや節税の『その先』にある、**FPならではの「相続計画の仕上げ」**です 相続は「財産を渡して終わり」ではありません。渡した後、次世代(子や孫)がその資産をどう守り、育てていくかまで設計して初めて完了します。
単に分けるだけでなく「未来」を設計する
家族それぞれのライフプランを見据えた戦略が必要です。
このように「生きているお金」として渡すことで、家族の感謝と安心が生まれます。
「資産を減らさず、さらに増やす」運用計画
受け取った資産をそのまま銀行に寝かせていては、インフレで目減りするだけです。
例えば、「相続時精算課税制度」を活用して早めに収益物件(アパート等)を次世代に移転すれば、家賃収入は子供のものになり、資産形成が加速します。 「資産運用」と「相続」をセットで考えることこそが、理想的な承継の形です。
相続は「死後の手続き」ではなく、**「家族の未来を守るプロジェクト」**です。 以下の7つのステップを順に進めることで、どんなに複雑な資産状況でも、必ず解決の糸口は見つかります。
「まだ早い」と思わず、元気なうちに最初の一歩を踏み出してください。
この記事を読んだあなたへ
「うちは大丈夫」が一番危険です。
転ばぬ先の杖として、まずこの「安心ステップ」を手に入れてください。
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ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/
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