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【完全版】相続計画の全体像|子孫へ資産を守る7つのステップ

目安時間 10分

相続に関する悩みは、税金だけでなく「誰にどう分けるか」「家族が揉めないか」など多岐にわたります。

特に不動産中心の資産構成では、分割の難しさや納税資金の確保が大きな課題となります。

「うちは仲が良いから大丈夫」

「まだ元気だから先の話」

そう思っている方ほど、いざという時に「争族(そうぞく)」に巻き込まれやすいのが現実です。

問題を未然に防ぐには、目先の節税策に頼る「相続対策(点)」ではなく、家族の想いとライフプランを踏まえた**「相続計画(面)」**が重要です。

この記事では、FPの視点から、**「資産を減らさず、家族の絆を守るための7つのステップ」**を、具体的なケーススタディを交えて解説します。

相続計画と相続対策の違い

「相続対策」と「相続計画」は似て非なるものです。

  • 相続対策(点の施策):

「生命保険で非課税枠を使う」「生前贈与をする」といった個別のテクニック。これだけでは全体のバランスが崩れることがあります。

  • 相続計画(面の設計):

「家族にどうなってほしいか(想い)」を軸に、誰に何を渡すか、納税資金はどうするか、二次相続まで見据えてトータルで設計すること。

相続を成功させるには、テクニックの前に**「計画(全体像)」**を描くことが不可欠です。

ステップ1:現状把握と理想像の明確化

相続計画の第一歩は、「家族会議」です。

親の資産状況、子供たちの生活状況、そして「実家をどうしたいか」という本音を共有しましょう。

  • 現状: 家族構成、資産内容、不安点
  • 理想: 円満な分割、納税資金の確保、二次相続後の安心

この「ギャップ」を埋めるのが相続計画です。

ステップ2:財産・不動産の現状把握(資産棚卸と分析)

次に、すべての資産を一覧化(棚卸し)します。

特に重要なのは**「不動産評価」**です。

  • 相続税評価額(路線価): 税金計算に使う低い価格
  • 実勢価格(時価): 実際に売れる価格

この2つには乖離があります。「評価額では公平に分けたつもりでも、時価では不公平だった」という事態を防ぐため、両方の視点で資産価値を把握しましょう。

【重要コラム】トラブルになりやすい2つのケース

相続は家族構成によってリスクが異なります。特に注意が必要な2つのケースについて解説します。

ケースA:子どもがいない夫婦の相続

「子供がいないから、全財産は配偶者にいく」というのは誤解です。

親や兄弟姉妹にも相続権が発生するため、遺言書がないと、**「自宅の名義の一部が義理の兄弟に移り、住み続けられなくなる」**といったトラブルが起きます。

  • 対策: 「全財産を妻(夫)に相続させる」という遺言書が必須です。

ケースB:二次相続(配偶者死亡後)が心配な家族

「一次相続(父→母)」では配偶者控除で税金がかからなくても、「二次相続(母→子供)」で多額の税金が発生し、子供たちが苦しむケースが多いです。

  • 対策: 一次相続の段階で、あえて子供にも資産を分けておくことで、トータルの税負担を減らせます。
  • シミュレーション: 「とりあえず母に全部」ではなく、二次相続まで見据えた税額試算を行いましょう。

    ステップ3:財産の整理・組換え(資産の4分類と対策)

    資産を以下の4つに分類し、「分けやすい形」に整えます。

  1. 優良・守る資産: 今後も価値が安定する土地など。
  2. 収益改善すべき資産: 活用されていない更地など。
  3. 整理・組換え資産: 価値が下がる、または管理が大変な不動産。→ 売却して現金化や買い替えを検討。
  4. 納税用資産: すぐに現金化できる預貯金や生命保険。

特に「分けにくい不動産」は、元気なうちに売却して現金化(換価分割)することも、争族を防ぐ有効な手段です。

ステップ4:財産の分け方と相続税試算

「誰に何を渡すか」を決めます。不動産の分割方法は主に3つです。

  • 現物分割: 家そのものを渡す。
  • 代償分割: 家を継ぐ人が、他の兄弟に現金を払う。
  • 換価分割: 家を売って現金を分ける。

同時に、「小規模宅地の特例」(同居親族などが自宅を相続する場合、評価額を80%減額できる制度)が使えるか確認しましょう。これが使えるかどうかで、税額は数千万円単位で変わります。

 

【FPの視点】「平等」と「公平」は違います

相続で揉める最大の原因は、「法定相続分通りにきっちり分けること(平等)」が、必ずしも「家族全員の納得(公平)」ではない点にあります。

例えば、以下のようなケースです。

  • 長女: 親の介護を一人で負担し、実家に同居していた。
  • 長男: 遠方に住み、住宅購入時に親から資金援助を受けていた。

この状況で、遺産をきっちり「半分ずつ」に分けることは、数字上は「平等」ですが、長女から見れば「不公平」に映るかもしれません。 逆に、実家に住んでいる長女だけに実家を継がせようとすると、資産価値のバランスが崩れ、今度は長男の遺留分を侵害して「代償金」が必要になるケースもあります。

相続は、単なる数字の割り算ではありません。 **「過去の経緯(介護や援助)」「これからの生活(誰が家を守るか)」**を含めて話し合い、全員が腹落ちする「公平な着地点」を見つけることが、真の円満相続への鍵です。

ステップ5:納税資金対策・節税計画

相続税は現金一括納付が原則です。「資産はあるけど現金がない」という事態(黒字倒産)を防ぐため、以下の準備をします。

  • 生命保険: 死亡保険金は「受取人固有の財産」となり、すぐに現金化できます。また「500万円×法定相続人数」の非課税枠もあります。
  • 生前贈与: 暦年贈与(年110万円)や、教育資金贈与などを活用し、計画的に資産を次世代へ移転します。

    ステップ6:遺言書作成・家族信託の検討

    計画の仕上げは、その意思を法的に確定させることです。

  • 遺言書: **「付言事項(メッセージ)」**に想いを書くことで、家族の納得感が高まります。公正証書遺言が最も確実です。
  • 家族信託: 親が認知症になった後でも、資産の管理や処分ができるようにする「資産凍結防止」の切り札です。

    ステップ7:次世代への資産設計・運用計画

    ここが、手続きや節税の『その先』にある、**FPならではの「相続計画の仕上げ」**です 相続は「財産を渡して終わり」ではありません。渡した後、次世代(子や孫)がその資産をどう守り、育てていくかまで設計して初めて完了します。

単に分けるだけでなく「未来」を設計する

家族それぞれのライフプランを見据えた戦略が必要です。

  • 教育資金: 孫の大学費用を援助する信託スキームを使う。
  • 住宅資金: 子供のマイホーム購入に合わせて贈与し、非課税枠を活かす。

このように「生きているお金」として渡すことで、家族の感謝と安心が生まれます。

「資産を減らさず、さらに増やす」運用計画

受け取った資産をそのまま銀行に寝かせていては、インフレで目減りするだけです。

  • 守るお金: 納税資金や生活防衛資金として確保。
  • 増やすお金: 長期的な運用に回し、複利効果で次の代へ大きく残す。

例えば、「相続時精算課税制度」を活用して早めに収益物件(アパート等)を次世代に移転すれば、家賃収入は子供のものになり、資産形成が加速します。 「資産運用」と「相続」をセットで考えることこそが、理想的な承継の形です。

まとめ:7ステップで進める相続計画

相続は「死後の手続き」ではなく、**「家族の未来を守るプロジェクト」**です。 以下の7つのステップを順に進めることで、どんなに複雑な資産状況でも、必ず解決の糸口は見つかります。

  1. 【現状・理想】 家族会議で想いを共有する
  2. 【棚卸し】 不動産評価と資産一覧を作る
  3. 【整理】 分けにくい資産を整理・現金化する
  4. 【分割】 揉めない分け方を決め、税額を試算する
  5. 【納税・節税】 保険や贈与で資金準備をする
  6. 【法務】 遺言書・家族信託で意思を固める
  7. 【未来】 次世代の運用・活用計画を立てる

「まだ早い」と思わず、元気なうちに最初の一歩を踏み出してください。

この記事を読んだあなたへ

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転ばぬ先の杖として、まずこの「安心ステップ」を手に入れてください。


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執筆者紹介

執筆者:塩川 卓司 (CFP® / 宅地建物取引士 / 証券外務員一種 / 相続アドバイザー) 独立系ファイナンシャルプランナー歴17年。相談実績500件以上。
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ファイナンシャルプランナー塩川

ファイナンシャルプランナー塩川

・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/

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