相続計画の進め方の
全体像についてまとめてみました。
相続対策と相続計画は微妙な言葉の違いですが
相続対策は、お客様の悩みや想いの全体像が掴めず
その場しのぎの対応になりがちになります。
そのため、対策の順番を間違えると別の問題を
生み出す恐れがあります。
一方で相続計画とは、家族の状況、財産状況、被相続人の想いなど様々な
視点から問題点や悩みを見つけ出し、解決方法を長い時間軸のなかで
計画していく方法です。
それにより、子や孫の代まで資産を守り、さらに増やす資産設計が
可能になります。
その相続計画サポートの流れを、順番に説明していきます。
目次
家族の状況、財産状況、被相続人の想いや悩みなど様々な視点から悩みや想いをリストアップしていきます。
それは、財産の分け方であったり、相続税のことであったり、配偶者や子や孫への
想いであったりすると思います。
現状を把握したら、今度は理想の把握です。
その状態になったら、現状の悩みや不安な想いが解消できるようになる
希望条件です。
この段階では、全体を俯瞰して方向性だけ間違わない
おおまかな認識で大丈夫です。
所有している財産の種類と金額をリストアップしていきます。
項目は、不動産、有価証券、預貯金、現金、その他(保険の解約返戻金など)
で分けます。
不動産の金額は相続税評価額と時価(実勢価格)が違ってきますので
その2種類の金額をリストアップします。
リストアップしたら、
不動産は、その価値を見極めるために
ROA分析(純資産利益率)という指標で収益性分析も行います。
不動産のROA分析とは、不動産がその価値に対して
どのくらいの収益をあげることができているのか、
が確認できる指標です。
ROAの計算方法は
POA率(%)=純収益(収入−支出)÷相続税評価額
です。
自宅は収益を生まないのでROAはマイナスになってしまいますが、仮に賃貸しした場合の
賃料を周辺相場から調べて計算することで、自宅も分析の対象とすることが可能になります。
不動産は社会的動向の変化に大きく影響を受けるため
市場調査による分析もしていきます。
市場分析は
人口動態や国とその自治体の政策などから分析していきます。
これにより、今は収益性があっても将来価値が低くなる不動産や
逆に現在収益性がなくても将来価値の高くなる不動産を見極めていきます。
財産分析の結果、
リストアップした財産を以下の4つに分類していきます。
1.優良・守る資産
2.収益改善するべき資産
現預金や生命保険、有価証券や更地など
3.資本改善するべき資産
借入金のない築古アパートや地形の悪い貸駐駐車場など
4.整理・組換する資産
旧借地や市場性の低いアパート、用途地域内の無道路など
この中で特に注視するべき資産は、4.整理・組換する資産になります。
財産の中身を把握した後に特に注視すべき財産は
整理・組換財産です。
この分類の中に入った財産は、
早期に整理や組換の対策を進めていく必要があります。
というのも、この分類の財産は
年数が経過するごとにますます整理が難しくなるという点と
整理できずに子供たちに引き継いでしまったら
後々大きな負担になってしまうからです。
整理組み換えするべき財産を売却すれば
負の遺産を引き継がずに済み
その資金を納税資金にできたり、
他の優良な財産に組換えることができれば
一挙両得です。
その後
2.収益改善するべき資産
3.資本改善するべき資産
についても適切な対策をしていきます。
財産の価値を適切に分析・整理・改善したら
誰がどの財産をどれだけ引き継ぐのかを考え、試案していきます。
・家族の幸せが未来永劫続くため
・もめさせないため
・優良な財産を子や孫に残していくため
ということをポイントに考えていきます。
分け方を考えると同時に、相続税額についてもおおまかに把握していきます。
特に不動産は、
・流動性は悪い
・財産全体の中での価値が大きくなる場合が多い
・分けにくい
という特徴から
もめさせない対策を、早めにとっていくことが重要になります。
試算の結果相続税がかかるなら、その相続税をどうやって支払うか
納税資金計画を組み立てます。
金融資産が少なく不動産資産が大きい場合には
一部の不動産を売却して相続税を支払う計画をたてなければ
ならない場合も出てきます。
又、有効な節税対策を計画し実行していきます。
納税資金計画と節税計画をもとに、財産の
分け方が変わる場合もあります。
分け方や納税資金対策、節税対策の方向性が固まってきたら
遺言書や家族信託の検討をします。
相続で家族がもめてしまうベスト3は
・特別受益:生前特定の親族にだけ資金援助をしていたなど
・寄与分:特定の親族が親の介護などの寄与をしていたなど
・不動産の分け方
の3つです。
もめることから発展して
紛争にまでなってしまうこともありえます。
紛争にまでなってしまう相続を後で振り返ってみると
遺言を作っておけば、紛争にならずに済んだ!というケースは多いです。
又財産を持っている方が認知症になってしまった場合
その後の相続計画の実行は、ほぼできなくなってしまいます。
そのため、
状況により家族信託も検討していきます。
ここが、相続対策ではなく相続計画の肝になります。
財産の棚卸をして、分け方が決まり、納税資金対策や節税対策
の方向性が定まったら、それぞれの家族の希望の
人生設計(ライフプラン)に基づいた資産設計・運用計画をたてていきます。
そのポイントは
最初に
人生の長い時間軸を見据えて
資産設計の目的をたてます。
目的は例えば、
時間軸の最初の方にくる相続税の納税資金を確保することであったり
逆に時価軸の最後の方にくる自分の老後資金の不足分を確保する
など
そして次に目的を実現するための
資産運用の目標を設定して
そこに至るための
必要な利回りを算出し
そしてその
運用方法の選定します。
納税資金対策や節税対策から
相続時精算課税制度などで子に資産を贈与して、
子がその資産を資産運用をする計画を立てれば
資産運用できる期間が長くなり、それだけ資産を増やすことが
可能になります。
その後は、
目的が達成するまでの間
定期的にその資産運用の進捗を確認して、
管理とリバランスをしていきます。
最後に相続計画の全体をまとめると
1.相続相談ヒアリング
2.財産・不動産の現状を把握する(財産分析)
3.市場調査による市場分析
4.整理・組換え財産を見つけ出す
5.整理・組換え財産を整理する(対策)
6.財産の分け方を考える
7.相続税がかかる場合納税資金計画・節税計画
8.遺言書に残す・家族信託の検討
9.子や孫の世代まで資産を守りさらに増やす資産設計・運用計画
となり、上から順番に進めていきます。
最後の次世代までお金に困らない資産設計・運用計画・ライフプラン
のところまで進んでみると、それまでの過程で立てた計画を修正したくなる
場合もあります。
その場合は、臨機応変に修正していきます。
そうすることで、
「子や孫の代まで資産を減らさず更に増やす」
ことに加え
「その人がその人らしく心から幸せに過ごせる」
相続計画が完成します。
そして、
子への資産承継後から
資産形成→資産運用→資産保持→また資産承継
と
本人から子 そして子から孫への富のスパイラルを
回していくことができるようになります。
この一連の長い時間軸の中で全体を見据え計画を立てていくことが
相続計画の全体像になります。
ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格) ・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員 ・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定) ・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) ・宅地建物取引士 ・証券外務員1種
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