「退職金、どう使うべきか…」
定年を迎える多くの方が直面する悩みのひとつが、退職金の使い道です。
退職金は一生に一度しか受け取れない、まとまった大きな資金。
しかし、使い方を間違えると老後資金が急激に減り、将来の生活に大きな不安を残してしまいます。
逆に、賢く活用すれば、老後の安心とゆとりを何十年も保つことが可能です。
本記事では、実例を交えて
という 3つの選択肢 をわかりやすく解説します。
さらに、使う前にやるべき準備や失敗例 も紹介しますので、退職金の最適な活用方法が見えてくるはずです。
退職金の金額は、勤続年数や企業規模によって大きく異なります。
厚生労働省「就労条件総合調査(2022年)」によると、大学卒・勤続35年以上の場合 の平均は以下の通りです。
金額を見ると「老後資金は十分では?」と思うかもしれませんが、実はそうではありません。
退職金は、老後生活のスタート資金の役割を果たします。
公的年金だけでは生活費をまかなえないケースが多く、退職金をどう活用するかで老後の暮らしが決まります。
例えば、総務省「家計調査(2023年)」によると、65歳以上夫婦世帯の平均支出は月約26万円。
公的年金の平均受給額は夫婦で月約22万円のため、毎月約4万円が不足します。
この不足分を退職金や運用益で補う必要があります。
退職金の使い道を慎重に考えなければ、次のような事態に陥ります。
一方で、「使う」「運用する」「守る」 のバランスを取れば、退職金は老後の安心を長く支える強力な資金になります。
退職金の使い道は、大きく分けて 「生活の安心確保」「資産運用」「住宅ローンや住環境改善」 の3つがあります。
それぞれの特徴やメリット・注意点を、実際の事例を交えて解説します。
特徴
退職金の一部または全額を安全性の高い資産(銀行預金・定期預金・個人向け国債など)に置き、生活費や医療費として使う方法です。
特に、生活防衛資金(生活費2〜3年分)を別口座に確保しておくと、想定外の出費にも安心して対応できます。
メリット
注意点
実例:安心を優先したAさん(62歳)
大手メーカーを退職したAさんは、退職金2,000万円のうち1,000万円を生活費専用口座に確保。
残りは年金受給までの生活費補填と、医療費・介護費のために定期預金に預けました。
「減らさない安心」を優先したことで、日々の生活に不安なく過ごせています。
特徴
退職金の一部を投資に回し、資産を増やすことを狙う方法です。
新NISAの活用や、投資信託・債券・株式などが代表的です。
ただし、老後資金全額を投資に回すのはリスクが高いため、全体の3〜5割程度までが安全圏です。
メリット
注意点
実例:計画的に運用したBさん(60歳)
退職金1,800万円を受け取ったBさんは、600万円を新NISAで自身のライフプランに沿った分散投資。
残りは生活費用口座と定期預金に分けました。
5年後、運用部分が年平均4%のリターンで増え、老後の旅行資金に充てる余裕が生まれました。
特徴
退職金を住宅ローンの一括返済や、家のリフォーム、バリアフリー化などに使う方法です。
特にローン残高がある場合は、完済することで毎月の支出を大幅に減らせます。
メリット
注意点
実例:ローン完済で生活が楽になったCさん(65歳)
退職時点で住宅ローン残高800万円があったCさん。
退職金で一括返済し、月7万円のローン返済がゼロになりました。
さらに一部をリフォームに使い、バリアフリー化も実現。
「毎月の生活費に余裕ができ、老後の暮らしに安心感が増した」と話しています。
退職金は、1つの使い方に全額を集中させるのではなく、複数の方法を組み合わせることが重要です。
例えば、
といった分散活用で、安心と資産成長を両立できます。
この後の第3章では、退職金を使う前に必ずやるべき3つの準備を解説します。
ここを押さえておくことで、退職金を無駄なく、そして後悔なく活用できます。
退職金を受け取った直後は、気持ちが開放的になり、つい大きな買い物や投資をしたくなります。
しかし、老後生活は20年〜30年と長期にわたるため、計画なしの使い方は非常に危険です。
ここでは、退職金を活用する前に押さえておくべき3つの準備を解説します。
退職金は大きな金額だからこそ、失敗すると生活全体が崩れる危険があります。
実際にあった3つの失敗パターンを紹介します。
退職金の使い方は、老後の暮らしを大きく左右します。
「使う・運用する・守る」 の3つをバランスよく組み合わせることが、後悔しない老後設計のカギです。
ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格) ・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員 ・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定) ・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) ・宅地建物取引士 ・証券外務員1種
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