
50代・60代にとって、**「不動産(自宅・実家)」**は単なる持ち物ではなく、老後の生活と資産の安定を左右する最大の要素です。
「今の家に住み続けていいのか?」
「親の実家、空き家になったらどうしよう」
「売るならいつが一番損しない?」
こうした悩みを、不動産屋任せにしていませんか?
しかし、彼らは「売買」のプロであって、あなたの「人生」のプロではありません。
不動産戦略で失敗しないコツは、**「住まい」「売却」「相続」**の3つをバラバラにせず、ライフプランの一部としてトータルで判断することです。
この記事では、FP兼宅建士の視点から、**「不動産で資産を減らさず、家族も揉めさせないための総合戦略」**を徹底解説します。
目次
多くの人は「持ち家=資産」と考えがちですが、これからの時代はそうとは限りません。
特に50代以降は、以下のリスクと向き合う必要があります。
何も対策せず放置された不動産は、資産どころか、お金と手間を奪う**「負動産」になりかねません。
「とりあえず持っておく」のをやめ、「活かすか、手放すか」**を決断することが、資産防衛の第一歩です。
子供が独立し、夫婦二人の生活になった時、今の家は「広すぎ」たり「不便」だったりしませんか?
老後の住まいには、大きく3つの選択肢があります。
向いている人: 愛着があり、地域のコミュニティを大切にしたい人。
注意点: 単に綺麗にするだけでなく、20年後を見据えた「断熱」「バリアフリー」が必須です。予算オーバーで老後資金を圧迫しないよう注意しましょう。
向いている人: 利便性を重視し、車を手放しても暮らせる環境を求める人。
メリット: 広すぎる戸建てを売却し、駅近のコンパクトなマンション等に移ることで、固定費を下げつつ、差額を老後資金に回せる可能性があります。
向いている人: 実家や自宅を手放さず、収益を生みたい人。
注意点: 「貸せば家賃が入る」と安易に考えがちですが、修繕リスクや空室リスクがあります。プロによる収支シミュレーションが不可欠です。
「売却」を選ぶ場合、単に高く売るだけでなく、**「手取り額」**を最大化する戦略が必要です。
複数の不動産会社に査定を出すのは基本ですが、「一番高い査定額=高く売れる」とは限りません。
契約欲しさに高い査定を出し、後から「売れないから値下げしましょう」と言ってくる業者もいます。相場観を養い、誠実なエージェントを選ぶことが重要です。
タイミング: 需要が高まる春・秋や、金利動向を見極めます。
見せ方: 内覧時の印象は価格に直結します。不用品を処分し、プロのクリーニングを入れる等の「ひと手間」で、100万円単位で成約価格が変わることもあります。
不動産売却には大きな税金がかかりますが、特例を使えば大幅に減らせます。
これらを知らずに売却すると、数百万円単位で損をする可能性があります。
実家の相続は、現金と違って「1円単位で分けられない」ため、最も揉めやすい火種です。
以下の3つの分割方法を知り、元気なうちに方針を決めておくことが、家族への最大の思いやりです。
「長男は実家、次男は預金」のように分ける方法。
リスク: 資産価値に差がある場合、不公平感が出やすい。
実家を継ぐ人が、他の相続人に「代償金(現金)」を支払う方法。
メリット: 不動産を細切れにせず、公平性も保てる。
条件: 継ぐ人に、現金の用意(または生命保険の活用)が必要。
不動産を売却し、現金を山分けする方法。
メリット: 最も公平で揉めにくい。空き家リスクも解消できる。
不動産相続で絶対に知っておくべきなのが、この特例です。
亡くなった方が住んでいた土地を、配偶者や同居親族が相続する場合、**「330㎡まで、評価額を80%減額できる」**という非常に強力な制度です。
例: 評価額5,000万円の土地 → 特例を使えば 1,000万円 として計算できる。
これにより、相続税がゼロになるケースも多々あります。
ただし、「同居の実態」や「申告期限」など条件が厳しいため、**「使えると思っていたら使えなかった」**とならないよう、早めに専門家に確認することが不可欠です。
「不労所得が欲しい」とアパート経営などを検討する方もいますが、定年後の新規投資は慎重になるべきです。
融資の壁: 年齢によりローンが組みにくい。
修繕リスク: 突発的な出費が老後資金を脅かす。
成功するのは「事業」として数字で管理できる人だけです。安易な節税目的での購入は避けましょう。
最後に、実家の処分や自宅の売却について、現場でよく聞かれる「迷い」にお答えします。
Q1. リフォームしてから売った方が、高く売れますか?
A. 原則、リフォームせずに「そのまま」売ることをおすすめします。
「綺麗にした方が高く売れる」と思いがちですが、実は逆効果になることが多いです。
最近の買主は「安く買って、自分好みにリフォームしたい」と考える人が増えています。売主の好みでリフォームしても、その費用分を売却価格に上乗せできるとは限りません。
リフォームにお金をかけるより、不用品を片付けたり、ハウスクリーニングで清潔感を出す方が、費用対効果は高いです。
Q2. 昔の土地で「測量図」が見当たりません。売れますか?
A. 売却契約までに「境界確定測量」が必要になるケースが一般的です。
隣地との境界が曖昧なままだと、売却後にトラブルになる恐れがあるため、買主から測量を求められることがほとんどです。
測量には数ヶ月の期間と数十万円の費用がかかります。「売りたい」と思ったら、早めに不動産会社や土地家屋調査士に相談し、準備を始める必要があります。
Q3. 古い家は「解体して更地」にした方が良いですか?
A. 安易な解体は禁物です。固定資産税が跳ね上がるリスクがあります。
更地にした方が買い手が見つかりやすい場合もありますが、建物を取り壊すと「住宅用地の特例(固定資産税が1/6になる減税)」が外れ、土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がってしまいます。
まずは「古家付き土地」として売り出し、どうしても売れない場合に「解体更地渡し」を検討するなど、税金コストと解体費用を天秤にかけて判断しましょう。
不動産戦略で大切なのは、「損得」だけではありません。
その家は、**「これからのあなたの人生(ライフプラン)を豊かにする器」**としてふさわしいかどうか、という視点です。
この3つを統合して考えることで、不動産は「重荷」から「最強の味方」に変わります。
判断力がある元気なうちに、最初の一歩を踏み出してください。
この記事を読んだあなたへ
査定に出す前に知っておきたい「売主の心得」とは?
失敗したくない方は、まずこの「マニュアル」を手に入れてください。
![]()
ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/
コメントフォーム