
50代の資産運用は、「増やす」と「守る」を同時に考える重要な時期です。退職や年金生活が視野に入ることで、「今からでも間に合うのか」「どれを選ぶべきか」と迷う方は少なくありません。特に、ここ数年の上昇相場を受け、株式や海外資産に偏りがちな運用を続けているケースも多く見られます。ただ、“攻め”に偏った運用は、将来の生活を揺るがすリスクにもつながります。本来、資産運用は相場で勝つためではなく、「自分のライフプランを実現するため」に行うものです。この記事では、50代からの資産運用において、株・投資信託・不動産をどの順番で取り入れ、どのように組み合わせるべきかを、実際の相談事例を交えながら、わかりやすく解説します。
目次
50代は、人生における大きな転換点です。
つまり、「お金を増やしたい」時期であると同時に、「大きく減らせない」時期でもあります。
50代の資産運用で特に重要なポイント
| 観点 | 重要な理由 |
|---|---|
| 運用できる時間は限られている | 大きな損失を取り返す余裕が少ない |
| リスク許容度が低くなっていく | 毎月の生活費や老後資金の確実性が重要 |
| 流動性の確保が不可欠 | 医療・介護など急な支出リスクが高まる |
結論
50代の資産運用では、「増やす前に守る体制を作る」ことが最優先です。
ここで、最近の相談現場からの実例を紹介します。
■ 相談事例(60代前半・小規模企業経営者)
すでに銀行を通じて資産運用をされていましたが、ポートフォリオを確認したところ、
という 株式一極集中型 の状況でした。
背景には、
という “強気相場に引っ張られた認識” がありました。
しかし、このような 偏りが起こりやすい時期こそ危険 です。
歴史的にも、
「相場に強気の空気が続いた後」 → 「大きな下落」
は繰り返し起きています。
■ 私がお伝えした根本的な視点
資産運用の目的は
“相場に勝つこと”ではなく、ライフプランを実現すること。
そのために必要なのは、
です。
今は相場が強く増えやすい時期ですが、
上昇に乗り遅れることよりも、暴落時に慌てて売ることの方が、資産寿命にとって致命的です。
だからこそ、
「分散=保険」ではなく
「分散=長く運用を続けるための土台」
と捉えることが重要です。
資産運用は、「何に投資するか」よりも どの順番で整えていくか の方が重要です。
50代の資産形成は、積み上げる時間が限られるため、焦って“攻め”に走ると、資産全体のバランスが崩れやすくなります。
そのため、まずは次の 4つのレイヤー(階層) に沿って、基盤から積み上げていくことが効果的です。
まず最優先は 生活費の1〜2年分 を手元に確保することです。
| なぜ必要か | 具体的な理由 |
|---|---|
| 相場変動に振り回されないため | 投資を中断せずに続けられる安定土台になる |
| 急な医療・介護費に対応するため | 50代以降は突発支出の可能性が高まる |
| 「安心して運用する」ため | 心理的な余裕が最も重要 |
生活防衛資金がないまま投資を強めると、下落した瞬間に運用を投げ出すリスクが高まります。
※生活費の1~2年分を最低限の目安として、「ご自身の生活費のレベル」「公的年金でどれだけ賄えるか」「将来の突発的な出費にどれだけ備えたいか」を考慮して、現金の割合を決めてください。
次に整えるべきは、土台になる 分散された投資信託 です。
この2つの軸でバランスを取ることで、値動きが安定します。
おすすめの開始方法
ここが 老後資金運用の中核となる層 です。
レイヤー2で基盤が整ったあと、余裕資金で 株式の成長性を取り込む のが安全な順序です。
50代以降は、
集中投資ではなく、広く分散した株式投資が基本 になります。
例)
ポイントは、
生活費を揺らさない金額で積み上げること です。
不動産投資はメリットも大きい一方、流動性が低いため、順番を誤ると家計を圧迫します。
不動産は、レイヤー1〜3が整った後に 検討する選択肢 と考えるのが安全です。
| レイヤー | 内容 | 役割 | 目安量 |
|---|---|---|---|
| 1 | 生活防衛資金 | 運用を続けるための「土台」 | 生活費の1〜2年分 |
| 2 | 分散型投資信託 | 安定して育てる「基盤」 | 月1〜3万円から |
| 3 | 株式(インデックスなど) | 成長を上乗せする「エンジン」 | 生活防衛資金を超える余裕資金で |
| 4 | 不動産・REIT | 資産・収入源の「拡張」 | 家計に無理のない範囲で |
この順番を守ることで、暴落に強く、長く続けられる資産運用が可能になります。
資産運用は「何に投資するか」よりどの比率で持つかが成果を左右します。
特に50代・60代では、
ライフプラン → 目標リターン → 資産配分
の順に設計することが重要です。
ここでは、
目的を達成するためにどれだけ“増えれば良いか”
例:
老後にあと年間36万円(=月3万円)の補填が必要 →
平均リターン 3〜4% を目安にするのが妥当。
| 目標利回り | 現実性 | 実現に必要な資産配分(目安) |
|---|---|---|
| 1〜2% | 非常に安定 | 債券・預貯金高め |
| 3〜4% | 現実的 | 株式と債券のバランス型 |
| 5〜7% | 変動大きい | 株式比率が高く、資産寿命が揺らぎやすい |
50代からは、3〜4%を狙う設計が最も無理がありません。
参考記事:なお、年金と資産を組み合わせて“使っていい金額”を算出する方法を先に押さえておくと、目標リターンの根拠がブレません。👉 年金+資産運用で“毎月いくら使えるか”を見える化する方法
現状でよくある例
この状態は、上昇相場には強いが、下落に脆い ポートフォリオです。
推奨ステップ(段階的に戻す)
比率例(リスクを抑えたい人)
| 資産 | 比率目安 |
|---|---|
| 日本株 | 15〜25% |
| 海外株(含オルカン・米国) | 35〜50% |
| 債券(国内+海外) | 25〜35% |
| 現金 | 生活費の1~2年分 |
ポイント
※「一気に変えない。3〜6ヶ月で段階的に移行 する。」
※現金比率は最終的には「ご自身の生活費のレベル」「公的年金でどれだけ賄えるか」「将来の突発的な出費にどれだけ備えたいか」を考慮して、割合を決められると良いでしょう。
最初に作る“基盤”
「つみたてNISA」+ インデックス型の投資信託 から始めます。
例:
進め方
| 期間 | 行動 |
|---|---|
| 1〜3ヶ月 | 毎月1〜3万円の投信積立で習慣づけ |
| 4〜12ヶ月 | 債券比率を少し加え、値動きをならす |
| 1年以降 | 余裕資金で株式や配当株を上乗せ |
比率例(標準型)
| 資産 | 比率目安 |
|---|---|
| 投資信託(株+債券のバランス型) | 50〜70% |
| 株式(インデックス・大型株) | 10〜25% |
| 現金 | 20% |
ポイント
Bは、基盤を“作ってから攻める” が正解です。
| タイプ | 最初にやること | 次にすること | 注意点 |
|---|---|---|---|
| A:偏りがある人 | 生活防衛資金 → 債券復元 | 株の比率を整える | 一度に動かさず、段階的に |
| B:これから始める人 | 投信で基盤を作る | 株とその他資産へ拡張 | いきなり高リスクにしない |
どちらも「長く続けられる設計」が最優先です。
50代・60代の方からの相談で特に多いのが、「相場が好調な時期に、株式へ比率が偏ってしまう」 ケースです。
先ほど紹介したお客様も、まさにその状況でした。
◎ 強気相場は、人の判断を“上向き”にゆがめる
ここ数年、米国株や全世界株が堅調だったことで、
といった“強気のストーリー”が頭の中に浮かびやすい、特別な相場環境が続いています。
しかし、これは “最近の成功体験が判断を支配する”という心理(近視眼バイアス) によるものです。
お客様はポートフォリオを一緒に見ながら、
こうおっしゃいました。
「言われてみれば確かに…
今はうまくいっているけれど、
これがずっと続くとは限らないですね。」
ここで生まれたのは 「今の自信」と「長期の不安」を同時に認識できた状態 です。
つまり、
短期の“増やす喜び”から、長期の“守る安心”へ視点が戻った瞬間 でした。
| よくある誤解 | 実際に大切なこと |
|---|---|
| 債券は増えないからいらない | 債券は「暴落時に売らずにすむ余裕」をつくる資産 |
| 株は多いほど勝てる | 株は“必要分だけ”が最も長続きする |
| 今は強気でいくべき | “どんな時でも続けられる設計”こそ本当の強さ |
暴落の局面で慌てて売ってしまうと、
その後の回復を逃し、長期の収益カーブは大きく削られます。
だからこそ、
「分散=守り」ではなく
「分散=運用を続けるための仕組み」
という理解が、50代からの運用では最も重要になります。
資産運用は「始めること」よりも、「続けられる形にすること」がはるかに重要です。
一度きりの判断ではなく、日常の中に「整える習慣」があることで、相場の波に揺さぶられず、安定した資産形成につながります。
以下は、今日から無理なく取り組める実践ステップです。
まずは、現在地を正確に把握します。
数字にすると、判断は驚くほど冷静になります。
「なんとなく不安」 は、
「現状が見えていない状態」 から生まれます。
生活費の 最低1〜2年分 を現金または即時解約可能な資産で確保します。
これは「増えない資産」ではなく、
運用を継続するための“土台” です。
※最終的には、**「ご自身の生活費のレベル」「公的年金でどれだけ賄えるか」「将来の突発的な出費にどれだけ備えたいか」**を考慮して、現金の割合を決められると良いでしょう。
ここでは金額より継続が優先です。
偏りがあれば、段階的に均衡へ戻します。
例:
株式 50〜60% / 債券 25〜35% / 現金 10%前後
焦って一度に動かす必要はありません。
「ゆっくり戻す」ことが、
そのまま 長く続けられる仕組み になります。
参考記事:配分を整えたら、税や社会保険の負担を抑えるためにお金を減らさない“引き出し方”のルールも決めておきましょう。 👉 お金を減らさないための“引き出し方戦略”|定年後の取り崩しルール
「何かあったら見直す」のではなく、
定期点検で淡々と調整することが大切です。
例:
長く続く運用は、
“感情ではなくルールで管理する” ことにより成立します。
参考記事:また、収入や取り崩しの仕方によって保険料が上がることがあります。制度面の見落としを避けるために、保険料の仕組みを踏まえた運用戦略も合わせてご確認ください。
50代からの資産運用は、決して「遅い」わけではありません。
むしろ、これからの暮らし方や価値観を見直せる貴重な時期です。
資産運用の目的は、
相場で勝つことではなく、人生を安定して楽しむこと。
そのためには、
を選ぶことが、最も確実な道筋になります。
あなたの資産は、
「大きく増やすこと」よりも、
「必要な未来に、きちんと残っていること」が重要です。
✅ 次のステップ(この記事を行動につなぐ提案)
この記事を読んだら、まず 10分だけ 時間を取ってください。
書き出すだけでOKです:
これが あなたの資産運用の“現在地” です。
ここから、未来に向けた地図が描けます。
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ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/
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