
「親から引き継いだ土地家屋を守るのが、子供の務めだ」
昭和の時代までは、それが当たり前の価値観でした。
しかし、令和の今は違います。
「不動産(実家)がいらない」という子供世代が急増しているのです。
「うちは駅に近いから大丈夫」「長男がいるから安心」
そう思っているのは親だけで、子供たちは裏で「固定資産税どうするの?」「誰も住まないのに管理できないよ」と頭を抱えているケースを、私は現場で嫌というほど見てきました。
判断を間違えると、大切な資産だったはずの実家が、子供の家計を食いつぶす**「負動産(ふどうさん)」**になりかねません。
この記事では、FP歴15年以上の現場経験に基づき、「実家を残すべきか、売るべきか」を判断するための3つの基準と、子供に迷惑をかけないための「資産の組み替え戦略」について解説します。
目次
一昔前まで、不動産は「持っていれば値上がりする資産」でした。しかし今は、以下のような「三重苦」のリスクがあります。
1. コストの上昇: 固定資産税に加え、空き家になった途端に管理費(庭木の剪定、防犯、修繕)が発生し続けます。
2. 売れないリスク: 都心の一等地以外は、売りに出しても数年間買い手がつかないことが珍しくありません。
3. 2024年からの義務化: 相続登記が義務化され、「田舎の土地だから放置」ができなくなりました(罰則規定あり)。
子供世代にとって、使い道のない実家は**「お金が出ていくだけの金食い虫」**になり得るのです。
では、ご自宅は「残すべき」でしょうか? それとも「売るべき」でしょうか?
感情論を抜きにした、FPとしてのシビアな判断基準を図解にまとめました。
| 基準 | チェック内容(現状) | FPの判定 |
|---|---|---|
| ①住む気 | 子供自身に 「戻って住む意思」がない (または貸す予定もない) |
× 売却を検討 |
| ②維持費 | 固定資産税・修繕費として 「300万円以上」残せない |
× 売却を検討 |
| ③相続人 | 相続人が複数いるが 「代償金(代わりの現金)」がない |
× 現金化して分割 |
一つでも「×(売却検討)」当てはまる場合、対策を急ぐ必要があります。それぞれの基準について、詳しく見ていきましょう。
一番危険なのは、「いつか帰ってくるかも」という親の期待です。
子供には仕事があり、配偶者の意向があり、子供の学校区があります。
**「もし私が死んだら、この家どうしたい?」**と単刀直入に聞いてください。
「住まない」「貸すのも面倒」という答えなら、残すべきではありません。
不動産を相続させるなら、その後の固定資産税や修繕費として、最低でも300万〜500万円の現金をセットで渡せるかが鍵です。
「家だけあげるから、あとは自力でなんとかして」というのは、子供にとって過酷なプレゼントです。
不動産は物理的に分けられません。
子供が2人以上いる場合、長男が不動産をもらえば、次男からは「兄貴だけズルい、俺には現金をくれ」という話になります。
この時、次男に渡す現金(代償金)がないと、結局実家を売って現金を分けることになり、兄弟仲も最悪になります。
私が実際に相談を受けた「失敗事例」をご紹介します。
【ケース:千葉県の一戸建て(築40年)】
父が亡くなり、母も施設へ。長男は都内のマンション住まい。
「実家を売るのは忍びない」と、とりあえず空き家のまま放置しました。
結果:
- 毎年15万円の固定資産税と、草むしり代で年間30万円の出費。
- 台風で屋根瓦が飛び、近隣トラブルで100万円の修繕費が発生。
- 5年後に売ろうとした時には建物が傷みすぎて「更地渡し」が条件に。
- 解体費用200万円がかかり、手元にはほとんどお金が残りませんでした。
教訓:
人が住まない家は、驚くべきスピードで朽ちていきます。「迷っている時間」そのものが、資産価値を下げ続けるのです。
もし、上記の診断で「売るべき(×)」という判断になった場合、元気なうちに動くことが最大の家族愛です。
「先祖代々の土地だから、絶対に売りたくない!」
そう強く願う場合は、不動産を守るための**「守りの資金(代償分割資金)」**を準備しなければなりません。
具体的には、生命保険を活用します。
「家を継ぐ長男」を受取人にした生命保険を用意しておけば、長男はその保険金を次男への代償金(代わりの現金)」として渡すことができ、実家を売らずに済みます。
※「不動産を守るための保険活用」については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてお読みください。
[関連記事:【相続×生命保険】不動産と節税の対策|代償分割と非課税枠の活用術]
(※ここに昨日の記事のURLをリンクカードで貼ってください)
不動産は、活用できて初めて「資産」になります。
誰も住まない家を残すことは、次世代への「負担」の先送りに過ぎません。
これが、FPとして提案する「令和の不動産戦略」です。
「うちはどうだろう?」と迷われた方は、手遅れになる前に一度ご相談ください。あなたの資産状況に合わせた「最適解」を一緒に見つけましょう。
この記事を読んだあなたへ
「うちはまだ大丈夫」が一番危険です。
不動産が「負動産」になる前に、家族で話し合うべきチェックポイントを、まずこのガイドブックで確認してください。
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ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/
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