
「うちはアパートがあるから、相続税対策はバッチリだ」
「子供たちには、家賃収入という『不労所得』を残してやれる」
もしあなたが不動産オーナーで、今そう思われているとしたら、少し危険かもしれません。
確かに、不動産を活用すれば相続税の評価額を下げることができます。しかし、FPとして数多くの相続相談を受けてきた私が断言できるのは、**「不動産の承継は、現金の10倍難しい」**ということです。
なぜなら、不動産は単なる「資産(モノ)」ではなく、入居者対応や修繕計画を伴う**「事業(ビジネス)」**だからです。
親御さんが優秀な大家さんであればあるほど、「子供も同じようにできるはず」と期待されることが多いのですが、ここに大きな落とし穴があります。
本記事では、教科書的な法律論ではなく、**不動産オーナーが現場で直面する「資産承継のリアルな失敗事例(落とし穴)」**を5つご紹介します。
大切な資産が、子供たちにとっての「負動産」にならないよう、元気なうちに本当の対策を知っておきましょう。
目次
まず、大前提として知っておいていただきたいのが、「資産承継」と「事業承継」は別物だということです。
資産承継(相続): 土地や建物の「名義」を子供に変えること。司法書士に頼めば手続きは完了します。
事業承継(経営): 大家としての「経営ノウハウ」「判断力」「リスク管理」を引き継ぐこと。
多くの方が「資産承継(名義変更)」の準備ばかり気にされますが、相続後にトラブルになるのは、圧倒的に**「事業承継(経営)」の失敗**が原因です。
「アパートを残したけれど、子供が管理できずに空室だらけになった」
「修繕費が払えず、スラム化して売るに売れない」
これらは全て、**「物件は残せたが、経営は引き継げなかった」**結果です。
では、具体的にどんな落とし穴があるのか、見ていきましょう。
これらは全て、私が実際に相談現場で見てきた「よくある失敗」です。
「うちは資産家だ」と思って蓋を開けてみたら、**「何億もの土地はあるが、手元の現金は数百万円しかない」というケースです。
不動産はすぐに現金化できませんが、相続税は原則として「現金一括納付」**です。
結果として、納税資金を作るために、先祖代々の土地や、一番収益性の高い優良物件を、足元を見られた価格で叩き売ることになります。
「不動産という資産」を守るためには、それに見合うだけの「現金(納税資金)」を用意しておくことが絶対条件です。
親御さんは長年の経験で、「そろそろ外壁塗装が必要だな」「この入居者は少し注意が必要だ」といった勘が働きます。
しかし、サラリーマンとして働いてきたお子さんに、突然その**「大家力」**を求めても無理です。
結果、収益が悪化し、精神的に追い詰められて「もう手放したい」と親族間(兄弟間)でトラブルになるケースも少なくありません。
「管理会社が一括で借り上げてくれる(サブリース)から、子供に手間はかからない」
そう信じて契約書の中身を確認せずに引き継ぐのは非常に危険です。
サブリース契約の多くは、**「数年ごとの賃料見直し(減額請求)」**が可能になっています。
相続した途端に家賃を下げられ、ローンの返済ができなくなる。いざ解約しようとしたら高額な違約金を請求される……。
契約内容という「爆弾」を抱えたまま引き継ぐのは避けなければなりません。
「まだ使えるから」と、築30年以上の古いアパートを大規模修繕せずに子供に渡すケースです。
これは子供からすれば、「将来発生する巨額の修繕費」という借金を背負わされるのと同じです。
相続直後に雨漏りが発生し、数百万円の出費が必要になったら、子供の家計は破綻します。
「自分の代で綺麗にしてから渡す」か、「売却して現金で渡す」か。出口戦略を決めるのは親の責任です。
これが最も厄介なトラブルです。
「兄弟仲良く半分ずつ」と、不動産を共有名義にしてしまうことです。
共有名義の不動産は、「全員の同意」がないと売却も大規模修繕もできません。
将来、兄弟の誰かが亡くなり、その配偶者や子供に権利が移っていくと、権利関係はネズミ算式に複雑化します。
誰も手が出せない「塩漬け物件」を作らないためにも、不動産の共有は原則NGです。
では、どうすればスムーズに引き継げるのでしょうか? 今すぐできる3つのステップをご紹介します。
まずは、保有している物件が「本当に残すべき資産か?」を数字で判断します。
「先祖代々の土地だから」という感情を抜きにして、**「収益を生まない負動産」**であれば、元気なうちに売却して現金化するのも立派な愛情です。
お正月に集まった時などに、「誰にいくら分けるか」という話だけでなく、**「誰が経営を引き継ぐか」**を話し合ってください。
「実はアパート経営には興味がない」「仕事が忙しくて無理」という本音が聞けるかもしれません。
無理に継がせるのではなく、お子さんのライフプランに合わせて資産の形を変えていく柔軟性が必要です。
規模が大きい場合は、個人所有ではなく**「資産管理会社(法人)」を作って建物を持たせたり、「家族信託」**を活用して管理権限だけを先に子供に移したりする方法も有効です。
これにより、認知症リスクに備えつつ、時間をかけて経営のバトンタッチを行うことができます。
不動産の資産承継において、「節税」はあくまで一つの側面に過ぎません。
最も大切なのは、**「次の世代がその不動産を受け取ることで、本当に豊かになれるかどうか」**です。
もし、「うちの物件は古くて心配だ」「子供に任せられるか不安だ」と感じたら、一人で悩まずに専門家にご相談ください。
税理士は「税金の計算」をしてくれますが、**「資産全体のバランスと家族の幸せ」**を設計できるのは、ファイナンシャルプランナー(FP)の得意分野です。
物件という「ハード」だけでなく、経営という「ソフト」までしっかりと引き継ぐ準備を、今から一緒に始めましょう。
不動産は、相続トラブルの原因になりやすい資産No.1です。
「負動産」にせず、大切な資産を円満に引き継ぐために、まずは「相続で揉めないための正しい手順」を確認しておきませんか?
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ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/
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