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「法定後見・任意後見・家族信託の違いと選び方|認知症・財産管理の備え方を徹底解説」

目安時間 9分

認知症や判断能力の低下は、財産管理や生活の質に大きな影響を及ぼします。

 

これに備える制度として「法定後見」「任意後見」「家族信託」がありますが、それぞれの特徴や目的は異なります。

 

本記事では、成年後見制度の基本から、家族信託との違い、制度の選び方のポイントまで詳しく解説し、あなたや家族が安心して老後を迎えるためのヒントを紹介します。

成年後見制度とは?

成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が十分でない方の権利を守り、日常生活や財産の管理をサポートする制度です。

 

制度の目的は「財産管理」と「身上保護」の2つに分かれます。

 

財産管理では、預金の出し入れや不動産の売買契約、遺産分割協議など、財産に関わる重要な手続きを代理・支援します。一方、身上保護では、介護サービスや入所契約、医療・入院手続きなど、本人の生活や福祉に関わる契約をサポートします。

この制度は「本人のため」という理念を大前提に、残っている本人の意思を尊重しながら、本人が本人らしい生活を続けられるように支援することを重視しています。成年後見制度には、後述する「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があり、利用するタイミングや仕組みに違いがあります。これらを理解することで、より適切な制度選択が可能になります。

法定後見制度の仕組みと種類

法定後見制度は、すでに認知症や障害などで判断能力が低下している人を保護するため、家庭裁判所が選任した成年後見人が本人を代理して財産管理や契約を行う制度です。

 

本人や家族の申し立てによって家庭裁判所が後見人を選定し、その判断に基づいて必要な代理権や同意権が付与されます。
法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて3種類に分かれます。

 

  • 比較的軽度の「補助」では特定の法律行為について支援が行われます。
  • 中度の「保佐」では重要な契約や財産管理について同意や代理が可能となります。
  • 重度の「後見」では、本人の財産や生活全般にわたる包括的な代理権を持ち、本人が不利益な契約をしてしまった場合には取り消す権限(取消権)もあります。このように、法定後見制度は家庭裁判所が後見人を厳格に管理するため透明性が高く、悪用やトラブルのリスクが低い一方で、柔軟性に欠けることが課題とされています。

任意後見制度の特徴と3つの類型

任意後見制度は、本人に判断能力があるうちに、将来の備えとして自分が信頼できる人(任意後見人)をあらかじめ選び、財産管理や生活支援に関する代理権を契約によって定めておく仕組みです。将来的に認知症や障害で判断力が低下したとき、契約内容に基づいて任意後見人が代理権を行使します。

 

契約は公証役場で公正証書として作成する必要があり、発効時には家庭裁判所によって任意後見監督人が選任され、任意後見人の業務を監督します。

任意後見制度には3つの類型があります。

  1. 「将来型」は、契約締結後、本人に判断能力の低下が見られ、家庭裁判所への申立てが行われると効力が発生します。
  2. 「即効型」は、契約後すぐに効力が生じ、判断能力に不安がある段階から任意後見がスタートします。
  3. 「移行型」は、生前事務委任契約→任意後見契約→死後事務委任契約と段階的に効力が発生する仕組みで、実務上多く利用されています。本人が自由に後見人を決められる点は大きなメリットですが、家庭裁判所の監督下にあるため、柔軟性がやや制限される場合があります。

法定後見と任意後見の違い

法定後見と任意後見は、どちらも判断能力が不十分な人をサポートする制度ですが、仕組みや自由度に大きな違いがあります。

 

最大の違いは 後見人の決定方法 で、法定後見は家庭裁判所が後見人を選任するのに対し、任意後見は本人が元気なうちに自由に後見人を指名できます。これにより、任意後見は信頼できる家族や知人にあらかじめ役割を託すことが可能です。

また、権限の範囲 も異なります。法定後見人は家庭裁判所の審判により与えられた範囲で代理や同意、契約の取り消しが可能ですが、任意後見人は契約内容に基づき代理行為を行うため、取消権はありません。

さらに、監督人の有無 にも違いがあります。任意後見では必ず任意後見監督人が選任される一方、法定後見では必要に応じて監督人が付されます。

法定後見は厳格な運用で本人を守る性質が強く、任意後見は本人の意思や希望を尊重する柔軟性に優れています。利用目的や状況に応じて、どちらが適しているかを判断することが重要です。

 

家族信託とは?成年後見制度との違い

家族信託は、家族を受託者として財産の管理や運用を委ねる制度で、成年後見制度と異なり「財産管理」に特化しています。委託者(親など)が元気なうちに信頼できる家族(受託者)と信託契約を結ぶことで、将来的に認知症などで判断能力が低下しても資産が凍結されることなく、柔軟な管理・処分が可能となります。

家族信託の大きな特徴は、財産の所有権を受託者に移転する点にありますが、課税関係は委託者(親)に残るため、売却時のマイホーム特例や長期譲渡所得の特例なども活用できます。また、家族信託では信託契約に基づき、資産運用や自由度の高い財産設計が行えるため、成年後見制度よりも柔軟な対応が可能です。

一方で、成年後見制度はすでに判断能力が失われた後に開始する「対症療法」的な制度であるのに対し、家族信託は事前に準備する「予防策」という位置づけです。特に不動産の売却・運用や投資など、将来にわたる積極的な財産活用を希望する場合、家族信託は有力な選択肢となります。

 

どの制度を選ぶべきか?判断のポイント

法定後見・任意後見・家族信託は、いずれも判断能力が低下した本人を支援する制度ですが、その目的や柔軟性は異なります。

 

身上保護を重視するなら法定後見 が有効です。例えば、介護契約や入院手続きなど生活面のサポートが必要な場合、法定後見制度は家庭裁判所の管理下で適切な保護が行われます。

一方、財産管理を自由に設計したい場合は家族信託 が適しています。特に、将来の資産凍結を避けながら不動産の売却・運用や投資を続けたい場合、家族信託は柔軟な財産活用を可能にします。

 

また、信頼できる人を自分で選び、将来に備えるなら任意後見 が有効です。契約内容を自由に決められるため、本人の意思を尊重したサポートが期待できます。

実務上は、家族信託と成年後見を併用するケースも増えています。例えば、財産管理は家族信託で行い、介護や医療契約などの身上保護は成年後見制度で補完するといった組み合わせです。

 

家族のライフデザインや資産の特性を踏まえて、最適な制度を選択することが大切です。

 

まとめ

法定後見、任意後見、家族信託は、いずれも判断能力が低下したときの不安を解消し、安心して生活を送るためのサポート制度です。

 

しかし、それぞれに特徴と得意分野があります。

 

  • 法定後見制度は、家庭裁判所が選任した後見人が厳格に財産管理や身上保護を行う制度で、認知症が進行してからの「対症療法」として機能します。
  • 任意後見制度は、本人が元気なうちに信頼できる人を選び、将来に備えて契約する制度で、本人の意思を尊重した柔軟な支援が可能です。
  • 家族信託は、事前に財産を信頼できる家族に託すことで、資産凍結を回避し、自由度の高い財産管理・運用を実現できる「予防策」といえます。重要なのは、家族の状況や資産内容、将来の希望に応じてこれらの制度を組み合わせることです。例えば、財産運用は家族信託、介護や生活支援は成年後見制度といった併用が効果的なケースも多く見られます。早めに専門家へ相談し、最適な制度設計を行うことが安心につながるでしょう。

 

 

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ファイナンシャルプランナー塩川

ファイナンシャルプランナー塩川

・CFP(FP上級資格) ・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員 ・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定) ・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) ・宅地建物取引士  ・証券外務員1種