資産5,000万円でも老後破綻?資産寿命を122歳まで延ばす「生存戦略」

目安時間 13分

「老後資金2,000万円問題」が話題になって久しいですが、現場で富裕層の方々の相談を受けていると、実はもっと深刻な「パラドックス(逆説)」に直面します。

それは、**「お金を十分に持っている人ほど、減っていく恐怖で動けなくなっている」**という現実です。

先日、当事務所のドアを叩いたK様(60代半ば)も、まさにその一人でした。 K様は、長年勤めた教育関係の仕事を退職し、現在は嘱託社員として働いています。几帳面な性格が表れるような、しっかりと整理されたファイルを持参されていました。

その中身を拝見すると、総資産は預貯金や金、保険などを合わせて**「約5,000万円」**。 独身のおひとり様としては、世間から見れば「勝ち組」とも言える十分な資産額です。

しかし、K様の表情は曇ったままでした。 「塩川さん、贅沢はしません。ただ、たまに京都旅行に行って、美味しいお茶を飲んで静かに暮らしたい。でも通帳を見るたびに怖くなるんです。このまま最後まで生きていけるのでしょうか」

「長生きするのが怖い」 そんな本音が、ふと漏れました。

なぜ5,000万円もの資産がありながら、これほどの不安に襲われるのか。 そして、どうやって資産寿命を95歳から122歳まで延ばすことができたのか。

今日は、今回のカウンセリングで導き出した**「インフレ時代の資産防衛策」**を、実録としてお伝えします。

※本記事は実際の相談事例をもとにしていますが、プライバシー保護のため、一部の設定や数字を変更しています。

 

資産5,000万円でも「95歳で尽きる」シミュレーション

まず、K様の資産状況を数字で整理しました。

「絶対に損をしたくない」という性格から、資産のほとんどは「元本保証」の商品に置かれていました。

  • 定期預金・普通預金: 大手銀行に預けたまま
  • 金(ゴールド): 過去に購入したもの
  • 貯蓄型保険: お付き合いで加入したもの

これらを総合し、今のポートフォリオ(資産配分)の平均利回りを計算すると、わずか**「約0.8%」**程度。

「銀行の金利よりは良いですし、年金も70歳まで繰り下げて増やす予定ですから……」

K様はそう仰いました。

しかし、ここに**「インフレ(物価上昇)」**の影響を加味すると、景色は一変します。

「インフレ率2%」の世界で起きること

現在、日本はインフレ局面にあります。

仮に今後、物価が毎年「2%」ずつ上がっていくとしましょう。

K様の資産は「0.8%」しか増えません。

  • 物価の上昇(支出増): +2.0%
  • 資産の増加(収入増): +0.8%
  • 実質的な価値: マイナス1.2%

何もしなくても、毎年資産価値が目減りしていく計算になります。

この条件で、現在90代のお母様の介護支援や、K様ご自身のささやかな楽しみを含めてシミュレーションを行いました。

画面に表示されたグラフは、厳しい未来を示していました。

【プラン① 現状維持(利回り0.8%)】

→ 95歳で、金融資産がゼロになります

「95歳までは持つのなら、十分ではないですか?」

そう思われるかもしれません。しかし、K様の表情は曇りました。

「母は今90代で元気です。私も100歳まで生きるかもしれません。もし95歳でお金が尽きたら……その後の生活はどうすればいいのでしょうか」

これが、**「長生きリスク」**です。

5,000万円あっても、「守り(預金)」だけではインフレの影響を吸収しきれないのです。

「家を買いたい」という願いを、一度見直す

K様にはもう一つ、迷っていることがありました。

「今、賃貸マンションに住んでいるのですが、安心のために中古マンションを買うべきでしょうか?」

手元の現金で、3,000万円〜4,000万円程度の物件を一括購入し、「終の棲家」を確保したいというご希望です。

確かに「自分の家」がある安心感は大きいものです。しかし、FPとしての計算結果は**「NO」**でした。

もし今、4,000万円を使ってマンションを買ってしまうと、手元の「運用できる資金(種銭)」が大幅に減ってしまいます。

「お金に働いてもらう」ための原資がなくなれば、当然、資産が増えるスピードも止まります。

さらに、老朽化したマンションの管理費や修繕積立金は、年金生活の家計を圧迫する要因になります。

資産寿命を優先する「戦略的賃貸」

私たちは話し合い、以下の戦略を立てました。

  • 今は買わずに賃貸を継続: 手元の現金を温存し、運用に回す(これを最優先とする)。
  • 将来の住まいは実家を活用: 将来的にはご実家(区分マンション)を引き継ぎ、賃貸ができなくなった時の「受け皿」とする。
  • 最終的には施設へ: 85歳、90歳になれば、持ち家よりも「サービス付き高齢者住宅」や「老人ホーム」の方が快適で安全。

「家を買う」ことで安心を得るのではなく、「現金を残して運用する」ことで将来の施設入居費用(=実質的な安心)を確保する

この決断が、後のシミュレーションを大きく好転させました。

「0.8%」を「4%」にするだけで、人生は18年延びる

「家を買わない」と決め、手元の資金(約5,000万円)を確保した上で、次に行ったのが**「お金の働き場所」**の変更です。

今まで銀行やタンスで眠っていたお金、そして効率の悪い保険を解約し、**「年利4%(インフレ率2%+実質成長2%)」**を目指す運用へとシフトさせました。

「4%」はハイリスクではない。時代のルールが変わっただけ

「投資で4%」と提案した時、K様は最初、「そんな危ない橋は渡りたくありません。堅実にいきたいんです」と難色を示されました。

そこで私は、今の日本で起きている「ルールの変更」についてお話ししました。

「K様、デフレだった過去30年は『現金で持つこと』が正解でした。物の値段が下がるので、お金の価値は相対的に上がっていたからです。 しかし、これからはインフレ(物価上昇)の時代です。『何もしない(0%)』ということは、現状維持ではなく、毎年2%ずつ資産をドブに捨てているのと同じことになってしまいます」

  • 昔の常識: 4%運用 = 欲張り、ギャンブル
  • 今の常識: 4%運用 = 資産を守るための「最低ライン(保守的)」

このパラダイムシフト(価値観の転換)をお伝えした時、K様の表情が変わりました。 「今まで守っているつもりだったのが、実は一番リスクを取っていたんですね……」

私たちは、世界中の優良企業の株式や債券に広く分散投資をする「投資信託」などを組み合わせ、無理なく「世界経済の成長(インフレ+α)」を取り込むポートフォリオを組みました。

  • 金(ゴールド)や現預金: 一部は「守り」として維持。
  • 運用資産: 新NISAをフル活用し、世界の成長(株式・債券)を取り込む。

シミュレーション結果(プラン②)

「利回り0.8%」から「4%」へ。

時間を味方につけると、大きな変化が起きました。

先ほどと同じ生活水準、同じインフレ率(2%)で再計算しました。

【プラン② 資産管理徹底(利回り4%)】

→ 資産が尽きるのは、113歳です

プラン①の「95歳」から、一気に**「18年」**も寿命が延びました。

「本当ですか……」

K様は画面を見つめていました。

113歳まで資産が持つなら、長生きリスクはほぼ解消されたと言えます。

「お金の置き場所を変えるだけ」で、これほどの安心が手に入るのです。

さらに「あと2年」働けば、資産寿命は「122歳」へ

ここで私は、K様に一つの提案をしました。

「K様、もし可能なら、今の嘱託のお仕事をあと2年だけ延長して、69歳まで働けませんか?」

K様は現在、週数回の勤務をされています。「仕事は嫌いではありませんが、そろそろ引退を……」と考えていたそうです。

しかし、**「69歳まで就労収入を得る(資産を取り崩さない期間を作る)」**という条件を加えて、再度シミュレーションを行いました。

【プラン③ 運用4% + 69歳まで就労】

→ 資産が尽きるのは、122歳です

さらに9年も寿命が延び、122歳という結果が出ました。

これはもう、「資産が尽きることはない(お金より先に寿命が来る)」と言えるレベルです。

「働く期間を2年延ばすだけで、こんなに変わるのですか」

K様は驚かれていました。

収入がある期間を延ばし、資産を取り崩す開始時期を遅らせる。さらにその間も「4%」で資産は増え続ける。この「複利効果」と「時間の確保」は非常に大きな力になります。

50代・60代おひとり様の賢い選択。「過度な死亡保障」を見直し、自分を守る「生存保障」へ

最後に、K様のケースで重要だった**「保険の見直し」**についても触れておきます。

K様は「独身だから、誰にも迷惑をかけたくない」という責任感から、多くの保険に加入されていました。

しかし、独身の方の場合、ご自身が亡くなった後に生活に困るご家族はいらっしゃいません。

私たちは、不要な死亡保障や、インフレに弱い貯蓄型保険を整理し、そこで浮いたお金と解約返戻金を、すべて**「ご自身が生きている間に使うお金(運用資産)」**に回しました。

保険は「誰かのため(遺族)」に残すもの。

運用は「自分自身」を救うもの。

おひとり様の老後戦略においては、「死亡保障(保険)」を捨てて、「生存保障(運用)」にシフトするのが合理的です。これも資産寿命を延ばすための鉄則です。

まとめ:未来への「期待感」が、資産寿命をさらに延ばす

今回のカウンセリングを終えて、K様は帰る際、安堵の表情で仰いました。

「来る時は足取りが重かったんですが、今は軽いです。あと2年、仕事も楽しみながら頑張れそうです」

今回の結果をまとめると、こうなります。

  • 【プラン① 現状維持】95で枯渇(長生きへの不安)
  • 【プラン② 運用4%へ変更】113まで安心(+18年の猶予)
  • 【プラン③ 運用4%+2年就労】122まで盤石(完全な安心)

K様が選んだのは、もちろんプラン③を目指した生き方です。

「122歳まで大丈夫」という自信は、心の余裕を生みます。不安で縮こまって生きるより、安心して使うべき時にお金を使う。それが結果として、健康寿命をも延ばすことにつながります。

あなたの資産寿命、診断してみませんか?

お金は、通帳に数字として置いておくだけでは、インフレの影響を受けてしまいます。

しかし、正しい場所に置き直し、役割を与えてあげれば、あなたを最期まで守ってくれる頼もしいパートナーになります。

  • 退職金が入ったけれど、銀行に置いたまま。
  • 「お金はあるはずなのに、なんとなく不安」が消えない。
  • 保険に入りすぎている気がする。

もし一つでも当てはまるなら、一度「資産寿命」の診断にいらしてください。

K様のように、あなたの人生にも「20年以上の猶予」と「心の安らぎ」が生まれるかもしれません。

執筆者紹介

執筆者:塩川 卓司
(CFP® / 宅地建物取引士 / 証券外務員一種 / 相続アドバイザー)
独立系ファイナンシャルプランナー歴15年以上。相談実績500件以上。

今の不安を、プロと一緒に「安心」に変えませんか?
まずは現状整理から。

【Web予約限定】
50代からの「資産の棚卸し&出口戦略」
初回診断(60分)に申し込む >

※初めての方限定価格 3,000円 / オンライン・対面対応

いきなり相談はハードルが高い…という方は、
まずは無料メール講座で学びませんか?

無料メール講座でガイドブックを受け取る >

コメントフォーム

名前 

 

メールアドレス 

 

URL (空白でもOKです)

 

コメント

CAPTCHA


 

トラックバックURL: 

ファイナンシャルプランナー塩川

ファイナンシャルプランナー塩川

・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/

★FP相談の魅力動画
FP相談ってどんな感じ?

「FPにお金の相談をしてみたいけれど、どんな話をするのかイメージが湧かない…」という方へ。

日本FP協会が、FP相談の様子を紹介する公式動画を公開しています。相談の流れや雰囲気を知りたい方は、ぜひご覧ください。

▶︎ FP相談の魅力(日本FP協会公式)

▶︎ 初回相談のご案内はこちら