親の高齢化や相続をきっかけに、「実家をどうするか?」という悩みを抱える50代・60代が急増しています。空き家を放置すると、固定資産税や老朽化、近隣トラブル、さらには相続時の対立など、数々のリスクが発生します。実家は“思い出の家”であると同時に、貴重な資産でもあります。
本記事では、 実家を資産として最大限に活かす3つの選択肢――「売却」「賃貸」「リフォーム」 を徹底解説。メリット・デメリット・判断基準を明確にし、あなたのライフプランに合った最適解を見つけるための実践的な知識をお届けします。
目次
親が高齢となり、将来的に実家が空き家になるかもしれない――そんな不安を抱く50代・60代が増えています。空き家は「固定資産税」「管理費用」「老朽化による修繕リスク」といった経済的負担だけでなく、近隣トラブルや治安悪化の原因にもなりかねません。総務省の統計によれば、日本の空き家率は上昇を続け、2030年には3軒に1軒が空き家になると予測されています。
さらに、放置した実家は相続時に大きな問題を引き起こします。兄弟間での意見の対立や、相続税・譲渡所得税の負担増加など、後回しにした結果、家族にとって大きなストレスや出費につながるケースが少なくありません。実家は「住む」「貸す」「売る」など、早めに方向性を決めることで資産として有効に活かすことができます。
特に、親が元気なうちに実家の現状(立地・建物状態・資産価値)を把握し、売却・賃貸・リフォームといった活用方法を検討することが重要です。今こそ空き家リスクを減らし、将来の相続やライフプランを見据えた準備を始めましょう。
実家をどうするか――これは多くの50代・60代が直面する大きなテーマです。
選択肢は大きく分けて「売却」「賃貸」「リフォーム」の3つです。どの方法も一長一短があり、実家の状態や家族のライフプランによって最適解は異なります。
老朽化や維持費の負担を避け、現金化して相続税や老後資金に充てられる現実的な選択肢です。
「思い出の家を手放さずに毎月の家賃収入を得る方法で、空き家対策としても有効です。ただし、建物の修繕や管理業務が必要となるため、専門の不動産管理会社の活用が欠かせません。
家族が住み継ぐ、あるいは二世帯住宅やセカンドライフの拠点として再活用する手段です。補助金や減税制度を利用すれば、費用負担を抑えながら資産価値を高めることも可能です。
これら3つの選択肢を比較・検討し、自分や家族にとってのメリット・デメリットを整理することが、後悔しない実家活用の第一歩です。
実家の活用方法として最もシンプルで現金化しやすいのが「売却」です。誰も住む予定がない場合や、維持費・老朽化の負担が大きい場合は、早めの売却が有効です。特に築年数が浅いうちに売却すれば、比較的高値で取引できる可能性が高まります。
売却のメリットは、固定資産税や修繕費といった維持コストがなくなり、得られた資金を相続税の納税資金や親の介護費用、子世代の資産形成に充てられる点です。また、空き家の放置リスクを防ぐことができます。
一方でデメリットは、思い出の家を手放す心理的な負担や、譲渡所得税が発生する可能性です。特に相続した実家を売却する場合は、「3000万円特別控除」や「住み替え特例」は原則として使えません。 ただし、被相続人が一人暮らしであった家を売却する場合には、一定条件を満たせば 「相続空き家の3000万円特別控除」 が使える可能性があります。これは、昭和56年5月31日以前に建築された家を耐震リフォームまたは更地にして売却する場合などに適用されます。
売却を成功させるためには、まず 相続登記が完了しているか確認 しましょう。名義が親のままでは売却できません。その後、複数の不動産会社に査定を依頼し、「査定額」「販売戦略」「仲介手数料」 を比較検討することが重要です。
また、譲渡所得税を抑えるために、「取得費加算の特例」や相続空き家特例 の活用を税理士に確認することをおすすめします。
感情だけでなく、資産価値や税制優遇策を踏まえて冷静に判断することが、実家売却を成功させるカギとなります。
「実家を売るのは抵抗がある」「手放さず収益化したい」という方には、賃貸としての活用が有効です。賃貸に出すことで、空き家による固定資産税の負担や老朽化のリスクを軽減しつつ、家賃収入を得られる資産へと変えることができます。
賃貸運用の第一歩は、建物の状態チェックです。古い家の場合、耐震性や水回り、電気設備の点検・修繕が必要になります。借主が安心して住める環境に整えるために、最低限のリフォーム費用を見積もりましょう。
次に、契約形態を選びます。 「普通借家契約」 は長期入居者を確保できますが、退去時には正当な理由が必要です。一方、 「定期借家契約」 なら契約期間満了で確実に明け渡しが可能で、将来的に売却や自分たちでの使用を検討している場合に適しています。
また、シェアハウスや民泊、地域支援住宅などへの転用も注目されていますが、地域の条例や建築基準法を確認する必要があります。入居者募集や家賃管理、トラブル対応は不動産管理会社に委託することで負担を軽減できますが、管理費用を考慮して収支計算を行うことが重要です。
「実家を売却や賃貸には出したくない」「家族で住み継ぎたい」という方には、リフォームによる再活用が有効です。二世帯住宅やバリアフリー住宅に改修することで、家族の暮らしやすさを高めながら資産価値の向上も期待できます。
リフォームを検討する際は、まず 「誰が・何のために住むのか」 を明確にしましょう。親世代の住まいとして使用するなら段差の解消や手すりの設置などバリアフリー化が必須です。子世代と同居するなら、水回りの分離や二世帯住宅化が快適性を左右します。
築年数が古い場合は、 住宅診断(ホームインスペクション) を実施し、耐震性・断熱性・基礎構造を確認しましょう。必要に応じて耐震補強や断熱リフォームを行うことで、長期的に安心して住める家になります。
費用面では、国や自治体の リフォーム補助金・減税制度 の活用が効果的です。「長期優良住宅化リフォーム推進事業」や「住宅ローン減税」などを事前申請することで、費用を抑えられます。さらに、リフォーム内容によっては固定資産税の見直しや相続時の評価額に影響するため、専門家と相談しながら計画的に進めることが重要です。
実家を「売却・賃貸・リフォーム」のどれで活用するかを決めるには、感情だけでなく客観的な判断基準が必要です。特に次の5つのポイントを押さえることで、失敗のない選択ができます。
実家の売却・賃貸・リフォームは、感情や思い出が絡むため、自己判断だけでは迷いやリスクが大きくなりがちです。そこで、まず 相続アドバイザーやファイナンシャルプランナー(FP)に相談し、家族全体のライフプランや資産状況を整理することが第一歩 となります。これにより、相続税や今後の生活設計を見据えた上で「売る・貸す・住む」の最適な方向性が明確になります。
方向性が決まったら、不動産会社を活用して市場価値を把握し、複数社の「査定額」「販売戦略」「仲介手数料」を比較しましょう。賃貸を選ぶ場合も、管理会社の選定や家賃設定に専門家の知見が欠かせません。
さらに、税理士に相談することで譲渡所得税・相続税・固定資産税の節税対策 がスムーズになります。例えば、「相続空き家特例」や「取得費加算」など、相続不動産に適用できる税制優遇の活用法を事前に確認できます。
このように、相続アドバイザーやFPを起点として全体の方向性をつかみ、不動産・税務の専門家と連携することで、感情や不安に振り回されず、納得のいく実家活用が実現できるのです。
親から受け継いだ実家を「売却・賃貸・リフォーム」のどれで活用するか――正解は一つではありません。大切なのは、実家の現状(立地・築年数・資産価値)を正しく把握し、家族の未来像やライフプランと照らし合わせて最適解を導き出すこと です。
実家を売却すれば、固定資産税や管理負担をなくし、得た資金を相続税や老後資金に充てることができます。賃貸にすれば、家賃収入を得ながら資産を維持することが可能です。リフォームを選ぶなら、家族が住み継ぐための価値を高め、次世代に思い出と資産を残せます。
重要なのは、感情的な判断に流されず、信頼のできる専門家や家族会議を通じて冷静に検討すること。空き家対策は後回しにするほどリスクとコストが増します。実家は家族の歴史と想いが詰まった大切な財産です。「残す・活かす・手放す」いずれを選んでも、心から納得できる決断こそが、後悔しない資産活用の第一歩となります。
ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格) ・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員 ・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定) ・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) ・宅地建物取引士 ・証券外務員1種
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