【完全版】配偶者を守る相続の鉄則|老後資金・居住権・二次相続

目安時間 8分

相続対策というと「子供への分配」や「節税」ばかりに注目しがちですが、最も守るべきは**「残される配偶者(妻や夫)の生活」**です。

日本の法律では、配偶者は相続において非常に優遇されています。

しかし、「税金がかからないから」といって安易に「全財産を配偶者に」と決めてしまうと、かえって将来の税負担が増えたり(二次相続)、手元の現金が不足して「資産はあるのに生活費が足りない」という事態に陥ることがあります。

この記事では、FPの視点から、制度(配偶者控除・居住権)の賢い使い方と、配偶者の老後資金を守るための具体的な対策を徹底解説します。

 

配偶者は法的に強く守られている(相続割合と税額軽減)

まず、配偶者がどれくらい法的に優遇されているか、基本を押さえましょう。

① 常に相続人になる(相続割合)

配偶者は、誰と一緒に相続するかに関わらず、常に相続人となります。法定相続分(目安となる取り分)も一番多く設定されています。

  • 子がいる場合: 配偶者 1/2 / 子 1/2
  • 子がいない場合(親と): 配偶者 2/3 / 親 1/3
  • 子も親もいない場合(兄弟姉妹と): 配偶者 3/4 / 兄弟姉妹 1/4

② 税金がほとんどかからない(配偶者の税額軽減)

これが最強の特例です。配偶者が相続する場合、以下のどちらか多い金額までは相続税がかかりません。

  1. 1億6,000万円
  2. 法定相続分まで

つまり、遺産が1億6,000万円以下であれば、配偶者が全額相続しても相続税は0円です。

「被相続人の財産形成に貢献してきたこと」や「今後の生活保障」を考慮して、国が手厚く保護しているのです。

【注意点】

この特例を使うには「申告期限までに遺産分割が確定していること」と「税務署への申告」が必要です。揉めていて分割が決まらないと使えませんのでご注意ください。

「とりあえず全額妻へ」は危険?二次相続の落とし穴

「1億6,000万円まで無税なら、とりあえず全部妻(配偶者)に相続させればいいのでは?」

多くの方がそう考えますが、ここには大きな落とし穴があります。それが**「二次相続」**です。

二次相続で税金が激増する理由

一次相続(夫→妻)では税金が0円でも、次にその妻が亡くなり、子供たちが相続する時(二次相続)に、以下の理由で税負担が重くなることがあります。

  1. 特例が使えない: 「配偶者の税額軽減」は子供には使えません。
  2. 財産の集中: 「妻自身の固有財産 + 夫から相続した財産」が合算され、遺産総額が大きくなるため、税率(累進課税)が跳ね上がります。
  3. 基礎控除の減少: 二次相続では相続人が一人減る(配偶者がいない)ため、基礎控除額(非課税枠)が減ります。

FPのアドバイス:

目先の「一次相続」だけでなく、「二次相続」までトータルでシミュレーションし、子供たちにもある程度の資産を先に渡しておく方が、結果的に家族全体の税負担が減るケースが多いです。

住む家と生活費を両立する「配偶者居住権」

2020年から始まった新制度**「配偶者居住権」**は、特に「実家(不動産)の価値が高くて、現金が少ない」ご家庭の救世主です。

制度の仕組み

従来は、妻が実家を相続すると、不動産の評価額が高すぎて現金をほとんど相続できず、「家はあるけど生活費がない」という資産貧乏になりがちでした。

この制度を使うと、実家の権利を以下の2つに分けられます。

  • 配偶者居住権(住む権利): 妻が相続(評価額が低い)
  • 所有権(持つ権利): 子供が相続

メリット

妻は「住む権利(低い評価額)」だけを持つため、その分、相続枠に余裕ができ、より多くの「預貯金(現金)」を相続できるようになります。

「住まい」も「老後資金」も両方確保できるのが最大のメリットです。

※利用には遺言や遺産分割協議での明記と、登記が必要です。

夫婦の記念に?「贈与税の配偶者控除」の注意点

いわゆる「おしどり贈与」と呼ばれる制度です。

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産(または購入資金)を贈与する場合、最高2,000万円まで非課税になります。

「生前に妻へ自宅を渡しておきたい」という想いを叶える制度ですが、コスト面では注意が必要です。

  • コスト高: 相続なら安い「登録免許税」や、かからない「不動産取得税」が、贈与の場合はかかります。手続き費用で数十万円〜100万円近くかかることも。
  • 判断: そもそも相続時には「配偶者の税額軽減(1.6億円)」や「小規模宅地の特例」が使えるため、あえてコストをかけて生前贈与する必要があるかは、慎重な判断が必要です。

【実践】配偶者の生活を守るための対策5選

制度は複雑ですが、やるべきことはシンプルです。

配偶者が困らないために、今すぐできる5つのステップをご紹介します。

 

1.家族会議を開く:

「お母さんの生活費を最優先にする」という合意を、子供たちと形成しておくことが最大のトラブル防止策です。

 

2.財産の見える化:

不動産や預金だけでなく、借入金や生命保険も一覧にします。「現金が足りるか?」をチェックしましょう。

 

3.配偶者名義の資産形成:

夫名義の預金は、亡くなると一時的に凍結されます。当面の生活費に困らないよう、妻名義の口座にもある程度の現金を移しておきましょう(年間110万円の贈与枠などを活用)。

 

4.公正証書遺言の作成:

「妻に自宅を相続させる」「配偶者居住権を設定する」といった意思は、法的に有効な遺言で残さないと実現しません。

 

5.専門家への相談:

「二次相続でいくら税金がかかるか?」は複雑です。税理士やFPと連携し、トータルのシミュレーションをしておくことが安心への近道です。

まとめ:節税よりも「安心」を優先しよう

相続対策において、配偶者の生活を守ることは全ての土台です。

  • 全額配偶者へ: 確かに税金は0円になりますが、二次相続や子供との関係悪化のリスクがあります。
  • 配偶者居住権: 住まいと現金を両立させる賢い選択肢です。

「資産はあるのに生活費が足りない」という事態を防ぐためにも、不動産と現金のバランスを考えた設計が必要です。

まずはご夫婦で、「残された方がどう暮らしたいか」を話し合うことから始めてみませんか?

 

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執筆者紹介

執筆者:塩川 卓司 (CFP® / 宅地建物取引士 / 証券外務員一種 / 相続アドバイザー) 独立系ファイナンシャルプランナー歴17年。相談実績500件以上。
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ファイナンシャルプランナー塩川

ファイナンシャルプランナー塩川

・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/

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