
相続対策というと「子供への分配」や「節税」ばかりに注目しがちですが、最も守るべきは**「残される配偶者(妻や夫)の生活」**です。
日本の法律では、配偶者は相続において非常に優遇されています。
しかし、「税金がかからないから」といって安易に「全財産を配偶者に」と決めてしまうと、かえって将来の税負担が増えたり(二次相続)、手元の現金が不足して「資産はあるのに生活費が足りない」という事態に陥ることがあります。
この記事では、FPの視点から、制度(配偶者控除・居住権)の賢い使い方と、配偶者の老後資金を守るための具体的な対策を徹底解説します。
目次
まず、配偶者がどれくらい法的に優遇されているか、基本を押さえましょう。
配偶者は、誰と一緒に相続するかに関わらず、常に相続人となります。法定相続分(目安となる取り分)も一番多く設定されています。
これが最強の特例です。配偶者が相続する場合、以下のどちらか多い金額までは相続税がかかりません。
つまり、遺産が1億6,000万円以下であれば、配偶者が全額相続しても相続税は0円です。
「被相続人の財産形成に貢献してきたこと」や「今後の生活保障」を考慮して、国が手厚く保護しているのです。
【注意点】
この特例を使うには「申告期限までに遺産分割が確定していること」と「税務署への申告」が必要です。揉めていて分割が決まらないと使えませんのでご注意ください。
「1億6,000万円まで無税なら、とりあえず全部妻(配偶者)に相続させればいいのでは?」
多くの方がそう考えますが、ここには大きな落とし穴があります。それが**「二次相続」**です。
一次相続(夫→妻)では税金が0円でも、次にその妻が亡くなり、子供たちが相続する時(二次相続)に、以下の理由で税負担が重くなることがあります。
FPのアドバイス:
目先の「一次相続」だけでなく、「二次相続」までトータルでシミュレーションし、子供たちにもある程度の資産を先に渡しておく方が、結果的に家族全体の税負担が減るケースが多いです。
2020年から始まった新制度**「配偶者居住権」**は、特に「実家(不動産)の価値が高くて、現金が少ない」ご家庭の救世主です。
従来は、妻が実家を相続すると、不動産の評価額が高すぎて現金をほとんど相続できず、「家はあるけど生活費がない」という資産貧乏になりがちでした。
この制度を使うと、実家の権利を以下の2つに分けられます。
妻は「住む権利(低い評価額)」だけを持つため、その分、相続枠に余裕ができ、より多くの「預貯金(現金)」を相続できるようになります。
「住まい」も「老後資金」も両方確保できるのが最大のメリットです。
※利用には遺言や遺産分割協議での明記と、登記が必要です。
いわゆる「おしどり贈与」と呼ばれる制度です。
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産(または購入資金)を贈与する場合、最高2,000万円まで非課税になります。
「生前に妻へ自宅を渡しておきたい」という想いを叶える制度ですが、コスト面では注意が必要です。
制度は複雑ですが、やるべきことはシンプルです。
配偶者が困らないために、今すぐできる5つのステップをご紹介します。
1.家族会議を開く:
「お母さんの生活費を最優先にする」という合意を、子供たちと形成しておくことが最大のトラブル防止策です。
2.財産の見える化:
不動産や預金だけでなく、借入金や生命保険も一覧にします。「現金が足りるか?」をチェックしましょう。
3.配偶者名義の資産形成:
夫名義の預金は、亡くなると一時的に凍結されます。当面の生活費に困らないよう、妻名義の口座にもある程度の現金を移しておきましょう(年間110万円の贈与枠などを活用)。
4.公正証書遺言の作成:
「妻に自宅を相続させる」「配偶者居住権を設定する」といった意思は、法的に有効な遺言で残さないと実現しません。
5.専門家への相談:
「二次相続でいくら税金がかかるか?」は複雑です。税理士やFPと連携し、トータルのシミュレーションをしておくことが安心への近道です。
相続対策において、配偶者の生活を守ることは全ての土台です。
「資産はあるのに生活費が足りない」という事態を防ぐためにも、不動産と現金のバランスを考えた設計が必要です。
まずはご夫婦で、「残された方がどう暮らしたいか」を話し合うことから始めてみませんか?
【FP塩川からのご提案】
「うちは二次相続まで考えるとどうなるの?」
「妻(夫)が一人になっても困らない具体的な分配案を知りたい」
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この記事を読んだあなたへ
配偶者の生活と、家族の絆を守るために。
転ばぬ先の杖として、まずこの「安心ステップ」を手に入れてください。
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ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/
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