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FPが解説|不動産オーナーの法人化で実現する節税と相続対策

目安時間 21分

不動産オーナーの中には、「そろそろ法人化を考えた方がいいのだろうか」と感じている方も多いのではないでしょうか。
賃貸経営の規模が大きくなるにつれ、税負担が重くなり、さらに将来の相続や承継をどうするかという新たな課題も見えてきます。

賃貸不動産の法人化は、単なる“節税手段”ではありません。
法人を活用することで、資産を「不動産」から「株式」へと整理し、家族への承継をスムーズに進めることができます。さらに、所得分散による税負担の平準化や、認知症リスクに備えた資産管理の仕組みづくりにもつながります。

 

この記事では、税理士目線ではなく、ライフプランと相続設計を重視するFPの視点から、「税金」「相続」「家族経営」をバランスよく考えた賃貸不動産の法人化戦略をわかりやすく解説します。

 

賃貸不動産を法人化するべきタイミングと判断基準

※法人化の検討は、「税金」だけでなく、資産全体のバランスを見直す絶好のタイミングでもあります。
▶ 関連記事:【完全版】50代・60代の資産管理ガイド|資産寿命を延ばすための総合戦略
「資産の見える化」から「使い方の最適化」まで、人生後半のお金の全体像を整理したい方はこちらもご覧ください。

 

賃貸不動産の法人化を検討する最初のきっかけは、多くの場合「税負担の増加」です。
個人事業として賃貸収入を得ている場合、所得が増えるほど税率が上がる「累進課税」が適用されます。所得税・住民税を合わせると最大で55%に達することもあり、年間の不動産所得が1,000万円を超えるあたりから、法人化による節税効果が見込めるといわれます。

しかし、FPとして私が重視しているのは、単なる税率の比較ではありません。
法人化を検討すべきタイミングは、**「お金の問題」だけでなく「家族・相続・経営の視点」**から総合的に判断する必要があります。

たとえば、

  • お子さまに賃貸経営を引き継ぐ予定がある
  • 配偶者や子どもに報酬を支払い、所得分散を図りたい
  • 相続財産を分けやすい形に整理しておきたい
    このようなケースでは、法人化の意義が大きくなります。

法人化することで、収益を法人に集約し、役員報酬として家族に分配できます。これは「贈与」ではなく「給与所得」として扱われるため、贈与税をかけずに資産移転が可能です。また、家族が役員として関わることで、将来の承継準備を自然に進めることもできます。

さらに、法人を通じた資産管理は、認知症リスク対策としても有効です。
個人所有のままでは、オーナーが判断能力を失うと不動産の売却や契約更新が難しくなりますが、法人所有にしておけば、他の役員が経営を継続できます。

つまり、法人化を検討する目安は「所得1,000万円超」だけではなく、

  • 家族へ経営をつなぐ準備を始めたい
  • 将来の相続を見据えて資産構成を整理したい
  • 長期的に持続可能な経営体制を作りたい
    と感じたときこそ、最適なタイミングといえるのです。

FPの立場から言えば、**法人化とは“税金対策”ではなく“家族経営の土台づくり”**です。
数字だけで判断するのではなく、ライフプランや資産承継の目的と一体で考えることが、失敗しない法人化の第一歩となります。

 

法人化が「相続対策」として有効な3つの理由

賃貸不動産を法人化する大きな目的のひとつが、**「相続のしやすさ」と「資産の整理」**です。
相続というと「税金を安くする方法」と捉えられがちですが、FPの視点から見ると、もっと重要なのは「家族が揉めずに、資産を引き継げる状態を作ること」です。

法人化が相続対策として有効な理由は、大きく次の3点にあります。

 

① 資産を「不動産」から「株式」に変えることで分割が容易になる

個人で不動産を所有していると、相続時には物理的に分けることができず、「誰がどの物件を相続するか」で揉めるケースが多く見られます。
一方、法人に不動産を移しておけば、相続の対象は不動産そのものではなく「法人の株式」となります。
株式は数値的に分割できるため、相続人ごとに持分比率を決めることで、公平に承継しやすくなります。

また、株式の評価は不動産評価よりも下がる傾向があるため、相続税評価額を抑える効果も期待できます。

② 役員報酬による「贈与税ゼロの資産移転」が可能になる

法人化すると、家族を役員にして報酬を支払うことができます。
この報酬は「給与所得」として扱われ、贈与税はかかりません。
つまり、法人の利益を家族に分散することで、自然な形で資産を移転できるのです。

さらに、報酬を受け取る家族にも給与所得控除が適用され、家計全体の税負担を軽減できます。
FPとしては、単に節税だけでなく、**「家族が経営に参加しながら資産を守る」**という形を作ることが重要だと考えています。

③ 相続税評価の圧縮と“経営の継続性”が同時に得られる

法人化によって、不動産は法人資産となり、個人の相続財産から外れます。
これにより、相続税の課税対象となる資産を圧縮できるうえ、相続後も法人が継続して賃貸経営を行うため、資産の維持と収益の安定性を両立できます。

また、オーナーが高齢化しても、他の家族役員が業務を引き継ぐことができるため、認知症や介護による経営停止リスクも抑えられます。
これは、後見制度に頼るよりも柔軟で、実務的な相続対策の一つです。

FP視点でのまとめ

税務上の評価減だけでなく、

  • 分けやすい資産構造
  • 贈与税をかけない資産移転
  • 継続可能な経営体制
    という3つの仕組みを同時に整えられるのが、法人化の最大の強みです。

つまり、**「相続の準備」と「家族経営の継続」を両立できる制度設計こそがFP流の法人化対策」**なのです。

 

※相続対策の中でも「法人化」は非常に有効ですが、他にも知っておくべき制度があります。
▶ 関連記事:相続対策の全体像|遺産分割・節税・不動産・事業承継を総合解説
分割・納税・節税を一体で考えることで、よりスムーズな資産承継が実現できます。

法人化で得られる5つの節税・資産管理メリット

賃貸不動産の法人化は、税金の軽減だけでなく、お金・不動産・家族のバランスを整える仕組みとしても非常に有効です。ここでは、FPの立場から見た「実務的な5つのメリット」を紹介します。

① 所得税よりも低い法人税率で“手残り”が増える

個人の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる「累進課税」です。
最高税率は45%(住民税を含めると55%)にも達しますが、法人税は中小企業なら約23.2%程度に抑えられます。
賃貸収入が1,000万円を超える規模になると、この税率差が大きく影響します。
また、法人では決算ごとに経費を柔軟に調整できるため、計画的に利益をコントロールできる点も強みです。

② 給与所得控除の活用で家族への“合法的な所得分散”が可能

法人化すると、家族を役員にして給与を支払うことができます。
その報酬は「給与所得」として扱われ、給与所得控除を適用できるため、家族全体で見れば大幅な節税が可能です。
たとえば、配偶者に月20万円の役員報酬を支払えば、年間240万円の所得を分散でき、家計全体の税率を引き下げる効果があります。
これは贈与税を使わずに資産を移す「自然な資産承継の仕組み」ともいえます。

③ 経費計上の幅が広がり、“守りながら節税”ができる

個人事業では経費として認められにくい支出でも、法人では事業関連性があれば経費計上が可能です。
たとえば、役員車両費、出張旅費、生命保険料、通信費などが該当します。
これにより、実際の支出を抑えながら税負担を減らす“守りの節税”ができます。
ただし、過度な経費計上はリスクを伴うため、FPとしては**「目的と整合性のある支出」に限定する姿勢**が重要だと考えています。

④ 赤字繰越が10年間可能で、長期的な資金計画に強い

個人事業では赤字を翌年から3年間しか繰り越せませんが、法人では最大10年間繰り越し可能です。
不動産経営では、修繕費や入退去のタイミングなどで一時的な赤字が出ることもありますが、
法人化しておけば、その損失を将来の利益と相殺でき、長期的に安定した税負担を実現できます。

⑤ 認知症リスクや相続後の混乱を防ぐ“継続できる経営”

法人にすることで、オーナー本人に万一のことがあっても、他の役員が運営を継続できます。
個人所有のままだと、判断能力の低下により売却や契約が止まってしまうことがありますが、法人であれば経営の継続が可能です。
この点は「税金よりも大切な安心要素」として、FPとして特に重視しています。

FP視点のまとめ

法人化は「税金を減らすためのテクニック」ではなく、
**“家族と資産を守るための設計”**と捉えることが成功の鍵です。

税率の優遇・所得分散・経費拡大といった数字のメリットの先に、
「家族経営」「相続準備」「リスク管理」が見えてくると、法人化の真の価値が実感できます。

 

法人化の落とし穴と注意すべき3つのポイント

賃貸不動産の法人化には多くのメリットがある一方で、正しい手順を踏まないと節税どころか負担が増えるケースもあります。
ここでは、実際の相談現場でよく見かける「3つの落とし穴」と、その回避のポイントを解説します。

① 社会保険や固定費の増加で“手取りが減る”こともある

法人を設立すると、代表者や役員は社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務になります。
保険料の半分は法人負担となるため、実質的にコストが増加します。
また、法人は赤字でも「均等割」と呼ばれる住民税(年7万円前後)が課されるため、利益が少ない年でも固定費が発生します。

【FPアドバイス】
短期的な節税効果ばかりを見ずに、「社会保険料+顧問料+設立費用」を含めた年間コスト比較を行うことが大切です。
シミュレーションを行うと、年間収益800万円前後では法人化のメリットが薄く、1,000万円超から効果が出やすい傾向があります。

② 法人貸付金が“相続財産として課税対象”になるリスク

個人の所有物件を法人へ売却(譲渡)する際、法人側に資金がないと「オーナーからの貸付金」として処理されます。
この貸付金は、相続時に「オーナーの資産」とみなされるため、相続税の課税対象になります。
せっかく法人化で評価を下げても、貸付金が残るとその分だけ相続税が増えるという逆効果になりかねません。

【FPアドバイス】
譲渡時には**「法人の資金計画」**を立て、無理のない返済スケジュールを設定することが重要です。
また、建物だけを法人に移し、土地は個人所有のまま「土地の無償返還届出書」を提出する形を取ると、権利関係のトラブルや評価上昇を防げます。

③ 税理士任せにして“経営視点”を持たないと失敗する

税務処理や決算は専門家に任せるべきですが、経営判断そのものを丸投げするのは危険です。
法人化によって、不動産オーナーは「経営者」になります。
役員報酬の設定や家族の関与の仕方、資金繰り、修繕・投資の判断など、数字の裏にある戦略を自分自身が理解しておく必要があります。

【FPアドバイス】
税理士は税金の専門家ですが、「家族の将来設計」や「相続・資産承継」をトータルに見渡す立場ではありません。
FPとしては、税理士と連携しながらも、**「家族の資産を守るための経営判断」**を自分で行う意識を持つことを強くおすすめします。

 FP視点のまとめ:数字より“長期の安心”を優先する

法人化の目的は節税ではなく、「家族と資産を守るための仕組みづくり」です。
社会保険料や会計費用を含めたトータルコストを把握し、貸付金や相続税評価にも目を配ること。
そして何より、“家族経営”として続けられる体制を整えることが、法人化を成功させる最大のポイントです。

 

法人化を“経営の仕組み化”として捉えることが、長期安定の鍵です。
▶ 関連記事:人生100年時代の資産管理|お金・不動産・相続を三位一体で考えるポイント
老後資金・不動産・相続を総合的に結びつけ、人生後半の安心を設計するヒントを解説しています。

 

不動産オーナーが選ぶべき3つの法人運営モデル

賃貸事業を法人化するといっても、実際の運営方法にはいくつかのパターンがあります。
どの方式を選ぶかによって、税金のかかり方やリスク、家族の関わり方が大きく変わるため、事前に特徴を理解しておくことが重要です。

ここでは、代表的な3つの法人運営モデルを比較し、FPの立場からそれぞれの適性を解説します。

① 不動産保有会社方式(建物を法人が所有)

最も本格的な法人化の形です。
法人が建物を所有し、入居者からの賃料収入を直接受け取ります。
個人の所得税を大幅に抑えられ、相続時には株式として分割できるため、資産承継に最も向いている方式です。

ただし、建物を法人に譲渡する際の譲渡益や、固定資産税・登記費用の負担が生じる点には注意が必要です。
長期的な事業運営を前提とする中・大規模オーナー向けです。

💬【FPコメント】
「家族で役員報酬を分配」「法人として保険加入」など、節税と承継の両立がしやすいモデルです。

② 不動産管理会社方式(管理料徴収)

個人が物件を所有したまま、法人が管理業務を請け負う方式です。
法人は管理報酬を受け取り、オーナー個人は賃料収入を得ます。
管理料を賃料の5〜10%程度に設定することで、法人の利益を家族に分散しやすくなります。

設立コストが比較的低く、リスクも少ないため、初めて法人を作る場合に適しています。
ただし、管理料を不当に高く設定すると「税務否認」される恐れがあるため、業界水準(5%前後)を守ることが重要です。

💬【FPコメント】
「節税を少しでも取り入れたい」「将来の法人化を試したい」方に最適。
本格的な法人化へのステップとして利用するケースが多いです。

③ 一括借り上げ方式(法人が借り上げて再貸付)

法人がオーナー個人から物件を借り上げ、入居者に再賃貸する方式です。
法人が入居リスクを負い、オーナーには安定した賃料(相場の80〜85%程度)が支払われます。
空室リスクを法人が引き受けるため、経営的にはやや難易度が高いですが、家族法人で柔軟な運用ができる点が強みです。

💬【FPコメント】
収益性よりも「安定」と「家族参加」を重視する方に向いています。
ただし、空室時の負担を想定したキャッシュフロー管理が不可欠です。

 

📊 3つの方式の比較表

項目 不動産保有会社方式 管理会社方式 一括借り上げ方式
所有形態 建物を法人が所有 個人所有・法人管理 個人所有・法人が借上げ
節税効果 ◎ 高い ○ 中程度 ○ 安定的
設立コスト 高い(登記・譲渡費用あり) 低い 中程度
相続対策効果 ◎ 分割容易・評価減可 △ 限定的 ○ 株式承継しやすい
リスク 初期費用・管理負担 税務否認リスク 空室リスク
適性規模 中〜大規模オーナー 小規模・試験導入 安定重視型オーナー

 

💬 FP視点のまとめ

法人運営モデルに「正解」はありません。
大切なのは、ご自身の収益規模・家族構成・承継方針に合った方式を選ぶことです。
FPとしておすすめしたいのは、「管理会社方式」から始め、将来的に「保有会社方式」へ発展させるステップ型。
これなら、初期コストを抑えつつ、家族経営の土台を整えることができます。

 

FPが伝えたい「法人化を成功させる3つの心得」

賃貸不動産の法人化は、税金を減らすためのテクニックではなく、**「家族の資産を守り、次世代につなぐ仕組み」**です。
制度や数字の知識も大切ですが、最終的な成功を左右するのは、オーナー自身の“経営と家族への意識”にあります。
ここでは、FPの立場から法人化を成功させるための3つの心得をお伝えします。

① 「税金」よりも「目的」を先に決める

「節税できるから」「周囲もやっているから」という理由で法人化を進めると、途中で行き詰まることが少なくありません。
まず明確にすべきは、「なぜ法人化したいのか」という目的です。
たとえば──

  • 相続を見据えて家族経営に移行したい
  • 老後に安定した賃貸収入を確保したい
  • 子どもたちに経営感覚を持たせたい

こうした“将来のありたい姿”を描いたうえで、それを実現する手段として法人化を位置づけることが重要です。
FPとして多くの相談を受けてきましたが、目的が明確な法人ほど長期的に安定し、節税効果も自然とついてくるものです。

② 「数字」だけでなく「家族」を見据えた設計にする

法人化の成功は、経営計画だけでなく家族の関与度にも大きく左右されます。
家族を役員に加えたり、報酬を支払ったりする仕組みを作ることで、経営が“家族の共通プロジェクト”になります。
また、将来の相続時に分割や意思決定で揉めるリスクを減らせます。

FPとしては、年に一度は「家族会議」を開き、

  • 法人の決算内容の共有
  • 今後の方針(修繕・投資・承継)
    を話し合うことをおすすめしています。
    この“見える化”の積み重ねが、相続時のトラブルを防ぐ最良の予防策となります。

③ 「実行」より「運用の継続」が成功を分ける

法人を設立しただけで安心してしまう方も少なくありません。
しかし、真の成功は「作ること」ではなく「続けること」にあります。
法人化後は、経理・税務・登記・社会保険など、定期的なメンテナンスが欠かせません。
これを煩雑に感じるか、仕組みとして楽しめるかが、長期的な差を生みます。

FPとしては、税理士・司法書士・保険・不動産の専門家と連携したチーム体制を整えることを推奨しています。
専門家に任せつつも、オーナー自身が“経営者意識”を持ち、数字と方針を理解していることが不可欠です。

 

💬 まとめ|「節税」から「承継」へ、そして「家族経営」へ

法人化の真の価値は、

  • 税金を減らすことではなく、
  • 資産を整理し、家族と未来を守ること。

これを理解したとき、法人化は“相続対策”ではなく“家族の資産経営戦略”に変わります。

今後、法人化を検討する際は、「税」「不動産」「相続」を横断して考えることが成功のカギです。

 

執筆者紹介

執筆者:塩川 卓司 (CFP® / 宅地建物取引士 / 証券外務員一種 / 相続アドバイザー) 独立系ファイナンシャルプランナー歴17年。相談実績500件以上。

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ファイナンシャルプランナー塩川

ファイナンシャルプランナー塩川

・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/