
「自宅を担保にお金を借りて、死んだら家を売って返せばいい。これぞ老後の切り札だ!」
最近、テレビや雑誌でリバースモーゲージが取り上げられることが増え、私の元にも「自分も使えますか?」という相談が多く寄せられます。
しかし、はっきり申し上げます。
ファイナンシャルプランナー(FP)としての私の見解は、**「リバースモーゲージは、安易に手を出すべきではない“劇薬”である」**というものです。
確かに「住み慣れた家に住み続けられる」というメリットは魅力的です。しかし、その裏には銀行のパンフレットには小さくしか書かれていない、**老後生活を脅かす「巨大な落とし穴」**が潜んでいます。
この記事では、きれいごとは抜きにして、プロの視点からリバースモーゲージの「リアルなリスク」と、それを踏まえた上での「正しい活用法」について、辛口で解説します。
検討中の方は、契約書にハンコを押す前に、必ず最後まで目を通してください。
目次
リバースモーゲージの仕組みを簡単に言うと、**「自宅を担保にした借金」**です。
通常のローンとの違いは、「生きている間は元本を返さなくていい(利息だけ払う、または利息も最後にまとめて払う)」という点です。
一見、夢のような制度に見えますが、金融機関はボランティアではありません。彼らはリスクを回避するために、非常にシビアな条件を設定しています。
FPの現場から見ると、多くの人が「自宅の価値」を過信し、「自分はそんなに長生きしないだろう」という甘い見通しで検討を始めています。それが最大の危険信号なのです。
リバースモーゲージには、老後の資金計画を根底から覆しかねない3つのリスクがあります。
多くの商品には借入の「極度額(上限枠)」が設定されています。例えば「2000万円まで」と決まっていたら、それを使い切った時点で借入はストップします。
もし、想定よりも長生きして、85歳で枠を使い切ってしまったら?
そこから先は、年金だけで暮らす極貧生活が待っています。人生100年時代において、「長生きがお金のリスクになる」典型例です。
担保である自宅の価値は、毎年見直されます。もし、不動産市況が悪化して担保価値が大きく下がったらどうなるでしょうか?
金融機関によっては、**「担保割れした分の元本を、今すぐ返してください」**と迫ってくる契約条項(極度額の見直し)が含まれていることがあります。
老後の年金生活で、突然数百万円の返済を求められたら……想像するだけで恐ろしい事態です。特に地方や郊外の物件は要注意です。
リバースモーゲージの多くは「変動金利」です。今後、金利が上昇局面に転じれば、毎月支払う利息、あるいは最後にまとめて支払う利息の総額が跳ね上がります。
「利息は最後に払うから大丈夫」と思っていても、その分、借入枠が早く埋まってしまうため、結局は使えるお金が減ることになります。
上記のリスクを踏まえ、FPとして「こんな人はリバースモーゲージを使うべきではない」と断言できるタイプを挙げます。
リバースモーゲージは、最終的に「家を売って借金を返す」仕組みです。原則として、家は残りません。相続させたいなら、他の方法を考えるべきです。
毎月の赤字補填のためにダラダラと借り続けると、あっという間に借入枠を使い切ります。リスクへの耐性が全くない状態での利用は危険すぎます。
将来、親が亡くなった後に家の売却手続きをするのは子供たちです。彼らの理解と同意がなければ、絶対に契約してはいけません。後で骨肉の争いになります。
ここまで辛口で書きましたが、リバースモーゲージ自体が悪というわけではありません。条件さえ合えば、有効な選択肢になり得ます。
活用の鉄則:
もし「家を残したい」「リスクが怖い」という場合は、以下のような方法を先に検討してください。
広すぎる家を売って、コンパクトなマンションや高齢者向け住宅に住み替える。手元にまとまった現金を残せます。
自宅を不動産会社に売却し、その後は「賃貸」として同じ家に住み続ける方法です。所有権は失いますが、借金の恐怖からは解放されます。
リバースモーゲージは、老後資金不足を解決する「特効薬」ではなく、副作用の強い「劇薬」です。使うなら、そのリスクを骨の髄まで理解し、医師(専門家)の処方箋のもとで慎重に使うべきです。
安易な広告に飛びつく前に、一度立ち止まってください。
「本当にこの方法しかないのか?」「他のリスクの少ない方法はないのか?」
ご自身のライフプランと照らし合わせ、冷静に判断するために、まずは私たちのような中立的なファイナンシャルプランナーにご相談ください。あなたの状況に合わせた、最適な「家の活かし方」を一緒に見つけましょう。
リバースモーゲージを契約するその前に
「家を売るなんて…」と諦めていませんか?
安易に借金をする前に、まずはご自宅の「本当の価値」と「正しい売り方」を知ってください。
知識がないまま進めると、数百万円単位で損をする可能性があります。
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ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/
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