【相続×生命保険】不動産と節税の対策|代償分割と非課税枠の活用術

目安時間 9分

「相続税対策で保険に入りましょう」

銀行や保険の営業マンから、そう言われたことはありませんか?

確かに生命保険には「非課税枠(節税)」のメリットがあります。

しかし、FP歴15年以上の現場経験から言わせていただくと、生命保険が真価を発揮するのは「節税」だけではありません。

「実家を売らなければいけない…」という最悪の事態(分割トラブル)を防ぐための「現金の即戦力」として使うこと。

これこそが、不動産オーナーにとっての生命保険の最大の役割です。

この記事では、単なる節税の話ではなく、**「不動産を円満に引き継ぐためにどう保険を使うべきか」**という視点で、分割・納税・節税の3つの活用法と、失敗しない保険の選び方を徹底解説します。

 

生命保険は「みなし相続財産」。民法と税法の違いを知る

生命保険は、相続において非常に特殊な立ち位置にあります。

この「二面性」を理解することが活用の第一歩です。

  • 民法上(分割の話):相続財産ではない
    受取人固有の財産となるため、遺産分割協議の対象外です。「誰にいくら渡すか」を契約時に決めておけるので、遺言と同じように意思を反映でき、揉める余地がありません。
  • 税法上(税金の話):みなし相続財産となる
    亡くなったことを原因として受け取るため、相続税の計算には含まれます。

この「遺産分割協議に入らない(=特定の相続人に確実に渡せる)」という性質が、次の「代償分割」で威力を発揮します。

【最重要】実家を守る「代償分割」の資金源にする

相続財産が「実家(3,000万円)」と「預金(500万円)」しかない場合、兄弟2人でどう分けますか?

実家を物理的に半分に割ることはできないため、多くのケースで**「実家を売却して現金を分ける」**ことになります。

しかし、「長男家族が同居していて売りたくない」場合どうするか?

ここで登場するのが**「生命保険を使った代償分割」**です。

活用事例

対策: 親が自分に保険をかけ、受取人を「長男(実家を継ぐ人)」にする。

結果: 長男は保険金(現金)を受け取る。その現金を「代償金」として次男に渡すことで、実家を売らずに、次男にも公平に遺産を分配できる。

「家はあるけど金がない」というご家庭こそ、生命保険で「調整用の現金」を作っておくべきなのです。

【節税】500万円×法定相続人の「非課税枠」を最大限に活かす

生命保険には、現金や不動産にはない強力な非課税枠があります。

非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

例えば、相続人が妻・子2人(計3人)の場合、1,500万円までの保険金は相続税がかかりません。

ただ銀行に1,500万円預けておけば丸々課税されますが、これを保険に移し替えるだけで、評価額をゼロにできるのです。

「預金を保険に変える」。これだけで確実な節税になります。

【数字で検証】現金2,000万円 vs 保険活用でどう変わる?

具体的にどれくらい相続税計算上の評価額が変わるのか、シミュレーションを見てみましょう。

モデルケース:

  • 相続人:子供2人(法定相続分による非課税枠:500万円×2人=1,000万円)
  • 資産:現金2,000万円を持っていた場合

    1.現金のまま相続した場合

  • 相続財産評価額:2,000万円
  • → 2,000万円全額に対して課税対象となります。

    2.1,000万円を「一時払い終身保険」に変えた場合

  • 現金:1,000万円
  • 生命保険:1,000万円(非課税枠1,000万円を使うため、評価額は0円
  • → 合計評価額:1,000万円

結果

保険に変えるだけで、相続税の計算上の財産を1,000万円も圧縮できました。

税率が10%〜20%の場合、これだけで**100万〜200万円の節税(キャッシュバック)**と同じ効果があります。手間をかける価値は十分にあります。

【納税】不動産しかなくても「即金」を作る

相続が発生すると、銀行口座は凍結され、遺産分割協議が終わるまで引き出せなくなります(※仮払い制度もありますが限度額があります)。

しかし、葬儀費用や当面の生活費、そして**相続税の納税(10ヶ月以内現金一括)**は待ってくれません。

生命保険金は、受取人が書類を提出すれば、通常1週間程度で振り込まれます。

この**「圧倒的なスピード(流動性)」**は、他の資産にはない強みです。

不動産が売れるのを待たずに納税資金を用意できるため、売り急いで安く叩き売るリスクも回避できます。

相続対策に「向く保険」と「向かない保険」

「保険なら何でもいい」わけではありません。目的に合った種類を選ばないと、いざという時に「保険金がおりない(期限切れ)」という事態になります。

◎ 向いている保険:終身保険(一生涯保障)

  • 特徴: 何歳で亡くなっても必ず保険金がおりる。
  • 理由: 人はいつ亡くなるか分かりません。「90歳で亡くなったら保険期間が終わっていた」では意味がないため、相続対策には必ず**「終身タイプ」**を選びます。最近は、手元の余剰資金を一括で預ける「一時払い終身保険」を活用するのが一般的です。

△ 向かない保険:定期保険(掛け捨て・期限付き)

  • 特徴: 「60歳まで」「10年間」など期間が決まっている。
  • 理由: 安い保険料で大きな保障を持てるので、現役世代の「生活保障」には最適ですが、相続対策(資産継承)としては不向きです。更新のたびに保険料が跳ね上がり、維持できなくなるリスクがあります。

FPとしてのアドバイスは、「相続対策(資産を渡す)」には終身保険「現役時代の守り」には定期保険と使い分けることです。

注意!契約形態(誰が払うか)で税金が激変する

「保険なら何でも節税になる」わけではありません。

**「誰が保険料を負担したか」**によって、かかる税金の種類が変わり、場合によっては損をすることもあります。

契約者
(保険料負担)
被保険者
(亡くなった人)
受取人 税金の種類 非課税枠
相続税 使える◎
所得税 使えない×
贈与税 使えない×

 

 

相続対策(非課税枠の活用)として使うなら、一番上の**「父(被相続人)が契約し、保険料を負担する」**形にするのが鉄則です。

まとめ:保険は「家族への手紙」代わりになる

生命保険は、単なる金融商品ではありません。

  • 「実家を守ってほしいから、代償金用の現金を残すよ」
  • 「すぐに使えるお金を用意したから、葬儀はこれで出してね」

受取人を指定することで、こうした**「親の想い」を確実に届けることができます。

特に不動産をお持ちの方は、「不動産(分けにくい資産)」と「生命保険(分けやすく使いやすい資産)」をセットで準備すること**が、円満相続の最適解です。

 

 

【FP塩川からのご提案】

「うちは保険に入った方がいいの?いくら入ればいい?」

「今の契約形態で本当に節税になっている?」

そう不安に思われた方は、まずご自身の状況を整理してみませんか?

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執筆者紹介

執筆者:塩川 卓司 (CFP® / 宅地建物取引士 / 証券外務員一種 / 相続アドバイザー) 独立系ファイナンシャルプランナー歴17年。相談実績500件以上。
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ファイナンシャルプランナー塩川

ファイナンシャルプランナー塩川

・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/

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