60代のマイホーム活用“総合ガイド”|住み替え・売却・賃貸をFPが比較

目安時間 10分

60代を迎えると、「この広い家に夫婦二人で住み続けていいのか?」「管理が楽なマンションや賃貸の方が幸せでは?」という迷いが生まれます。

人生100年時代、定年後の暮らしは30年以上続きます。

住まいは単なる「建物」ではなく、あなたの**「健康」「資産」「幸福度」**を決める最大の土台です。

しかし、多くの人が「愛着があるから」という理由だけで判断を先送りし、結果として**「老朽化した家に縛られ、資金も体力も尽きる」**という後悔をしています。

この記事では、**「リフォーム」「住み替え」「賃貸」**のどれがあなたにとって正解なのか?

FPの視点から、費用・メリット・リスクを徹底比較し、後悔しない決断のための判断基準をお伝えします。

まず現状を直視する:今の家は「資産」か「負担」か

判断を始める前に、今の家の「健康診断」をしましょう。

以下の項目に当てはまる場合、その家は将来、あなたを苦しめる「負担」になる可能性があります。

  • 維持費: 固定資産税、修繕費、光熱費が年々重く感じられる。
  • 移動: 駅やスーパー、病院まで遠く、車がないと生活できない。
  • 環境: 階段や段差が多く、2階の部屋が物置になっている。
  • 温度: 冬の脱衣所が寒く、ヒートショックの不安がある。

「住み慣れている」という感情を一旦横に置き、**「10年後、80代になった自分たちがここで安全に暮らせるか?」**を冷静に問いかけてみてください。

【実話】住まいの選択で明暗が分かれた2人の事例

ここで、実際の相談現場で見た対照的な2つのケースをご紹介します。

成功例:Aさん夫婦(60代後半)「ダウンサイジング」

郊外の広い戸建て(築35年)にお住まいでしたが、「庭の手入れが限界」と感じて売却を決断。

駅徒歩5分のコンパクトな中古マンションに住み替えました。

  • 結果: 車を手放して維持費が浮き、その分で毎月のように温泉旅行を楽しんでいます。「家が狭くなって掃除が楽になったのが一番嬉しい」と奥様も大満足です。

失敗例:Bさん(70代前半)「現状維持の落とし穴」

「住み慣れた家がいい」と、段差の多い古い家に住み続けました。

しかし75歳で足を悪くし、階段が使えず1階だけで生活するように。冬場の寒さも体に堪え、結局介護施設に入居することに。

  • 結果: 空き家になった自宅は売るに売れず、施設費用と家の維持費の二重払いで、預金が急速に減っています。

「決断の遅れ」が、老後の明暗を分けるのです。

選択肢①:今の家に住み続ける(リフォーム)

「やっぱり今の家が好きだ」という場合の選択肢です。

必須条件:老後に優しい「バリアフリー」と「断熱」

単に内装をきれいにするだけでは不十分です。命を守るために、以下の改修が必須です。

  • 段差の解消: つまずき転倒を防ぐフラットフロア化。
  • 手すりの設置: 玄関、トイレ、浴室への導線確保。
  • 断熱改修: 二重窓など。ヒートショックは交通事故より死亡率が高いリスクです。

【お得情報】使える「補助金・減税」を知っておこう

リフォーム費用は安くありませんが、以下の制度を使えば負担を減らせます。

  • 介護保険(住宅改修費支給): 要支援・要介護認定を受けていれば、手すり設置などで最大20万円の補助(1〜3割負担)。
  • 自治体の助成金: 「高齢者住宅改修助成」などの名称で、独自の補助金を出している自治体が多いです。必ず役所で確認しましょう。
  • リフォーム減税: バリアフリーや省エネ改修を行うと、所得税や固定資産税が減額される制度があります。

    選択肢②:住み替え(購入・ダウンサイジング)

    「広すぎる家を売って、駅近のコンパクトなマンションへ」という、今、選ぶ方が増えている選択肢です。

メリット

  • 生活の質向上: 掃除が楽になり、車を手放しても生活できる利便性が手に入る。
  • 資金の確保: 郊外の戸建てを高く売り、安い中古マンションを買えば、差額(手残り現金)を老後資金に回せる可能性があります。

デメリット

  • コスト: 仲介手数料、登記費用、引越し代などの諸費用がかかる。
  • 環境変化: 新しいコミュニティに馴染むストレス。

    選択肢③:賃貸に移る(売却して身軽に)

    「家を所有するリスク(固定資産税・修繕義務)」から解放されたい人向けです。

メリット

  • 身軽さ: 嫌ならまた引っ越せる。設備が壊れても大家負担で直してもらえる。
  • 現金化: 自宅を売却して得た現金を、すべて老後資金や運用に回せる。

デメリット

  • 更新リスク: 高齢になると「貸し渋り」に遭うリスクがある(※最近はURなど高齢者歓迎の物件も増えています)。
  • 資産消滅: 家賃は掛け捨てとなり、子供に資産を残せない。

    徹底比較:持ち家 vs 賃貸、60代の正解は?

    永遠のテーマですが、60代においては**「ライフプラン(価値観)」**で答えが決まります。

    比較項目 持ち家
    (維持・住み替え)
    賃貸
    (売却)
    安心感
    「終の棲家がある」安心

    更新や退去の不安あり
    コスト
    修繕費・税金が予測不能

    家賃は一定だが一生続く
    資産性
    子供に残せる
    ×
    何も残らない
    自由度
    簡単に動けない

    施設入居時も解約が楽
  • 「資産を子供に残したい」「リフォームを自由にしたい」持ち家
  • 「家にお金を縛られたくない」「施設に入る可能性が高い」賃貸

    資金計画の鉄則:「売り」が先か「買い」が先か

    住み替えを決断した時、一番の悩みは**「自宅の売却」と「新居の購入」、どっちを先に進めるか**です。

パターンA:売り先行(推奨)

  • 今の家を売って、現金化してから新居を探す。
  • メリット: 予算が確定するので、資金ショートの危険がない。
  • デメリット: 仮住まいが必要になる場合がある。

パターンB:買い先行

  • 新居を買ってから、今の家を売る。
  • メリット: 引っ越しが1回で済む。じっくり新居を選べる。
  • デメリット: 元の家が想定価格で売れなかった場合、**「二重ローン」「老後資金の大幅減」**になるリスクが高い。

【FPのアドバイス】

シニア世代の住み替えは「資金の安全性」が最優先です。原則は**「売り先行」**、もしくは「確実に売れる価格(査定額の下限)」を見極めてからのスタートをお勧めします。

住まい選びに関する「よくある質問」

最後に、住まいの見直しでよくある「迷い」にお答えします。

Q1. 子供部屋を物置にしていますが、リフォームすべきですか?

  1. その部屋は「あなたのための部屋」に変えましょう。

独立した子供が帰ってくるのは年に数回です。そのために部屋を空けておくのは無駄です。壁を抜いてリビングを広げたり、趣味の部屋にしたりと、**「夫婦二人の暮らし」**を最優先にリノベーションすることで、満足度が上がります。

 

Q2. 仏壇があるから、狭い家には移れません。

  1. 最近は「コンパクト仏壇」への買い替えも一般的です。

ご先祖様を大切にする気持ちは素晴らしいですが、それが理由で不便な家に縛られ、あなたの生活が脅かされては本末転倒です。お寺で供養してもらい、新居に合う小さな仏壇にするなど、柔軟に考えてみましょう。

まとめ:住まいは「ライフプラン」で選ぶ

「どの家に住むか」は「どう生きるか」と同じです。

正解は一つではありません。

  1. **今の家の「市場価値」**を知る
  2. リフォーム費用住み替え費用を比較する
  3. 10年後の健康状態を想像する

この3つを並べて、夫婦で話し合ってみてください。

「なんとなく住み続ける」のではなく、「自分で選んで住む」ことが、セカンドライフの満足度を劇的に高めます。

 

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執筆者紹介

執筆者:塩川 卓司 (CFP® / 宅地建物取引士 / 証券外務員一種 / 相続アドバイザー) 独立系ファイナンシャルプランナー歴17年。相談実績500件以上。
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ファイナンシャルプランナー塩川

ファイナンシャルプランナー塩川

・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/

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