
50代・60代を迎えると、「これからの人生をどう生きていくか」を見つめ直す場面が増えます。
老後資金や年金など「お金」の不安が頭に浮かぶのは自然なことですが、人生100年時代のこれからを豊かに過ごすうえで、本当に大切なものは お金だけではありません。
むしろ、人生の満足度を決めるのは
という 「自分の内側に蓄えられる資産」 です。
先日、伊勢の小さなレストランで “第二の人生を自分の手で選んだ人” に出会いました。
その姿は、「人生は50代からでも、60代からでも、再び豊かに始めることができる」ということを、強く教えてくれました。
本記事では、そんな“第二の人生を豊かに生きるための3つの資産”について、具体例とともに、今日からできる育て方をお伝えします。
目次
50代・60代と聞くと、「そろそろ老後の準備をする時期」というイメージを持つ方も多いかもしれません。ですが、平均寿命が80代から90代へと伸び続ける今、私たちの人生はまだまだ長く続きます。定年退職や子どもの独立など、日常の役割や環境が変わるこのタイミングは、むしろ 「これからの人生をどう楽しむかを決める転換点」 と言えます。
社会の価値観も変わりました。
以前は「一つの仕事を定年まで続ける」のが当たり前でしたが、今は「第二の人生を再設計すること」が自然に受け入れられる時代です。実際に、セカンドキャリアや学び直し、副業や地域活動など、人生の後半から新しいチャレンジを始める人は確実に増えています。
また、50代・60代はこれまでの経験や知識、人とのつながりが育っている時期です。若い頃にはなかった視野や判断力があるからこそ、より自分らしい生き方を選べる可能性が広がっています。
ここで大切なのは、「残りの人生をどう過ごすかは、自分で決められる」ということです。
今の生活がどれだけ慌ただしくても、将来に少し不安があっても、
人生の地図は、いつからでも描き直すことができます。
ただし、その再設計には一つの前提があります。
それは、「お金」だけに目を向けないこと。
もちろん、資産や年金は生活に欠かせない土台です。
しかし、人生の満足度を決めるのは金額の多さではありません。
これから先の時間を豊かにするには
・何を学び、どう考え
・誰と関わり、支え合い
・どんな心と体の状態で日々を過ごすのか
といった 「自分の内側にある資産」 を整えることが欠かせません。
次の章では、なぜ「お金だけでは安心できないのか」。
そして、なぜ「内側の資産」が人生の質を左右するのか。
その理由について、少し深く見ていきます。
老後の不安と聞くと、多くの方がまず「お金」を思い浮かべます。
年金は足りるのか、貯蓄はどれくらい必要か、退職金はどう運用すべきか…。
こうした疑問や不安は、どなたにとっても現実的なテーマです。
確かに、生活の基盤をつくるうえで「お金」は欠かせません。
ですが、人生100年時代を生きる私たちにとって、お金は豊かさを支える “要素の一つ” に過ぎません。
なぜなら、人生の質を決めるのは、金額ではなく 「どんな日々を過ごしているか」 だからです。
お金が十分にあっても、満たされないことはある
実際に相談を受けていると、退職金が多く、年金にも余裕があり、資産も十分な方が、
「急に寂しさを感じるようになった」
「何を楽しみに生きたらいいかわからない」
とお話しされる場面に出会います。
理由は明確です。
こうした “心の支え” となるものが、退職とともに減ってしまうからです。
どれだけ預金通帳の数字が多くても、
日々話せる相手がいなかったり、
誰かに必要とされている実感がなければ、
人は豊かさを感じにくくなります。
一方で、収入が大きくなくても、
は、表情がいきいきとしています。
そして、こうした人に共通しているのが、「お金以外の資産を大切にしている」という点です。
その資産とは、
の3つ。
これらは「見えにくい資産」ですが、人生の後半にこそ、その価値が大きくなっていきます。
ここで一つ、視点を整理します。
お金は「人生を支える道具」。
一方で、
知的・人的・健康資産は「人生そのものを形づくる基盤」。
この順番を間違えてしまうと、
という状態になりやすいのです。
逆に、内側の資産が整っている人は、
そんな生き方に移っていきます。
ここで、ある出会いの話に触れます
内側の資産が人生を支えるということを、
私自身が強く実感した出来事があります。
→ 次章では、伊勢の小さなイタリアンで出会った「第二の人生を自分で選んだ人」のお話を紹介します。
その出会いは、「人の資産」と「生きがいの力」を象徴するものでした。
先日、伊勢神宮を訪れた際、外宮近くの小さなイタリアンレストランで夕食をいただきました。
民家を改装した隠れ家のようなお店で、同時に入れるのは3組ほど。
落ち着いた空気の中で、60代前半ほどのマスターと料理人のお二人が、丁寧に店を切り盛りしていました。
会話を交わす中で、料理人の方が以前は 歯科医師だった ことを教えてくださいました。
歯科医院を続けながらも、ずっと料理が好きだったそうです。
休日には料理の勉強を続け、家族や知人に料理を振る舞ううちに、
「いつか本気で料理に向き合いたい」という思いが心の中で消えずに残り続けたとのこと。
そして、ある時、子どもが歯科医院を継いでくれることになり、
「人生の後半を、自分の好きなことに使ってみよう」と決心したのだそうです。
そこから料理人としての道が始まり、今はこの店で、生き生きと厨房に立っていました。
一方のマスターも、長年「自分の店を持つ」ことを夢にしてきた方でした。
お二人は、こちらが求める距離感に合わせて自然に話をしてくれ、
その表情はとても穏やかで、充実した時間を生きていることが伝わってきました。
お店の空気は温かく、
料理は丁寧で、
そして何より、お二人が仕事の中に 喜びと手応えを見つけていること を感じました。
ここで私が強く感じたのは、次のことです。
人は50代でも、60代でも、人生を選び直すことができる。
そして、その選択は大げさなものではなく、
「心が動く方向に、少し舵を切ること」から始まります。
このお二人は、
収入の多さや肩書きではなく、
「どんな時間を生きたいか」に軸を置いていました。
その姿は、「人的資産」と「生きがいの資産」が満ちている状態そのもの。
まさに第二の人生を豊かに生きるためのヒントでした。
次章では、このエピソードを踏まえながら
人生の後半に育てたい「3つの資産」 を具体的に解説していきます。
自分の未来を育てる3つの資産
先ほどの伊勢のレストランの二人が象徴していたのは、
「お金以外にも人生を支える資産がある」ということでした。
それが、
という、後半の人生ほど価値が増していく “自分の内側に蓄えられる資産” です。
ここから、それぞれの資産がどのように人生を支え、
どう育てていけばよいのかを具体的に見ていきましょう。
50代・60代は「もう新しい学びは必要ない時期」ではありません。
むしろ、人生の選択肢を増やせる時期 です。
本を読む。
興味のある講座を受けてみる。
デジタルやお金の基礎知識をアップデートする。
小さな学びの積み重ねが、「知らないからできない」を「知っているから選べる」へと変えてくれます。
知の資産とは、
“未来の自由度” を生み出す力 です。
人とのつながりは、量ではなく 質 が大切です。
・話を聞いてくれる相手
・頼られたり、役に立てる場
・一緒に笑い合える人
これらがあるだけで、人生の満足度は大きく変わります。
伊勢のレストランの料理人が楽しそうに働けているのは、
「大好きな料理」と「信頼する仲間(マスター)」という
人的資産が支えているから でした。
人は、誰かとつながることで、
「自分はここにいて良い」と自然に思えます。
どれだけ知識があり、人とのつながりがあっても、
心と体が疲れていては、人生を楽しむ余力がありません。
健康資産とは、
といった日々の土台です。
特別な努力は必要ありません。
歩く時間を少し増やす。
夜更かしを一つ減らす。
深呼吸をする時間をつくる。
そうした小さな積み重ねが、
未来の自分を守る 最大の投資 になります。
3つの資産は「ばらばら」ではなく、支え合っている
知 → 人 → 健康
健康 → 人 → 学び
といった形で、3つは互いに影響し合いながら循環します。
たとえば、
という 良い流れ が生まれます。
人生は「急に変わる」のではなく、
積み重ねた習慣が、ある日やさしく花を咲かせる のです。
次章では、
この3つの資産を 無理なく育てるための「生活の配分」 についてお伝えします。
知の資産・人の資産・健康の資産は、どれか一つだけ育てるのではなく、
少しずつ、バランスよく育てることで、お互いを支え合う力が生まれます。
たとえば、
このように、3つの資産は 循環しながら強くなっていく 性質があります。
逆に言えば、
どれか一つが欠けるとバランスが崩れやすくなります。
だからこそ、完璧を目指す必要はありません。
少しずつ、続けられる形で育てることが大切です。
では、何から始めれば良いのでしょうか?
ポイントは「生活の時間配分」を整えることです。
無理のない目安は、以下の通りです。
| 資産 | 1日または1週間の目安 | 例 |
|---|---|---|
| 知の資産 | 10〜20分 | 読書 / 動画講座 / 新しい情報に触れる |
| 人の資産 | 週に1回 | 家族・友人と話す / 趣味で人と会う |
| 健康の資産 | 毎日15〜30分 | ウォーキング / ストレッチ / 睡眠の見直し |
重要なのは、
大きな変化ではなく、小さな積み重ね です。
たとえば、
これだけでも立派な投資です。
そしてその積み重ねは、
未来のあなたが「心から安心して暮らせる土台」になります。
次章では、
今日からできる「小さな一歩」 を、より具体的な形で紹介します。
あなたが無理なく、自然に取り組めることだけを選んでいますので、
ぜひ気軽に読み進めてみてください。
資産というと「大きなことをしなければ育たない」と思いがちですが、
知の資産・人の資産・健康の資産は、小さな行動の積み重ねで確実に育ちます。
いきなり完璧を目指す必要はありません。
むしろ、大きな目標ほど続かなくなるものです。
大切なのは、
「できることを一つだけ決めて、それを淡々と続けること」。
ここでは、今日から無理なく始められる「3つの一歩」をご紹介します。
「1日10分だけ、気になるテーマに触れる」
・ニュースアプリで1記事読む
・読みかけの本を10ページ進める
・YouTubeで解説動画をひとつ見る
ポイントは、「内容の質」ではなく 継続のリズム です。
知識は、少しずつ確実に“積み上がって”いきます。
「1人に、声をかける・連絡する」
・久しぶりの友人に「元気?」とメッセージする
・家族とゆっくり食事をする時間を作る
・挨拶をひとつ丁寧にする
人的資産は、「数」ではなく 関係の温度 が大切です。
あなたにとって大切な人と、
もう一度、つながりを温めてみてください。
「5分だけ歩く、5分だけ伸ばす」
・エスカレーターではなく階段を使う
・寝る前にゆっくり呼吸しながらストレッチする
・散歩の時間を5分だけ増やす
“ちょっとだけ” が、未来の体をつくります。
体が整うと、心も自然と整い始めます。
大切なのは「続けられる選び方」
3つも同時に始めなくて大丈夫です。
心にすっと入ってきたものを1つだけ選んでください。
それが、あなたにとって今いちばん必要な一歩です。
小さく始めて、ゆっくり続ける。
それだけで、人生は静かに、しかし確実に変わっていきます。
※さらに、「自分資産をどうバランスよく育てていくか」を、より体系的に整理した記事もあります。
必要に応じて、こちらも参考にしてみてください。
→ セカンドライフを豊かにする『お金・人・健康』のバランス設計
50代・60代は「老後の終わり」ではありません。
ここから始まるのは、第二の人生です。
そして、その人生を豊かにするのは、お金の多さではなく、
という 「自分の内側に蓄えられる資産」 です。
先日、伊勢の小さなレストランで出会ったお二人は、
50代・60代から、好きなことへ舵を切りました。
派手な転身ではありません。
「心が動いた方向へ、静かに一歩踏み出した」だけです。
その選択が、日々の表情や声やまなざしに、
確かな人生の充実感 を作り出していました。
※もし今、「将来のお金がどのくらい必要か」「年金と資産をどのように組み合わせて使えば安心なのか」についても整理したい方は、こちらをご覧ください。
数字の不安は、“仕組み” に変えていくことができます。
→ 50代・60代の老後資金不安を“仕組み”でなくす7ステップ
人生は、いつからでも選び直せます。
遅いことは何ひとつありません。
今日から始める小さな一歩が、
未来のあなたを静かに、やさしく変えていきます。
それで十分です。
大切なのは、「今日を丁寧に生きる」こと。
その積み重ねが、人生の後半を、しなやかで豊かな時間にしてくれます。
もし今、少しでも心が動いたなら、
その気持ちを大切にしてください。
あなたの第二の人生は、まだこれからです。
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ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格)・証券外務員1種・宅地建物取引士・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定)・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) (独立系FP会社株式会社住まいと保険と資産管理 所属)」https://www.mylifenavi.net/
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