60歳の定年後、「継続雇用で65歳まで働くか、それともフリーランスとして独立するか」。
人生100年時代の今、この選択が今後20〜30年の生活を左右します。
本記事では、継続雇用とフリーランスのメリット・デメリットを比較し、老後の安心を支える資金計画の立て方、保険・社会保障の見直し、iDeCo・NISA・小規模企業共済などの節税制度活用法を解説。
さらに、両方を組み合わせたハイブリッド型の働き方も紹介し、あなたに合った60歳からのセカンドキャリアの選び方を具体的にお伝えします。
目次
60歳の定年退職を迎えると、多くの方がまず考えるのが「継続雇用か、それともフリーランスか」という二択です。
しかし、実際には両者の特徴を理解し、自分のライフプランに合わせた働き方を組み合わせることが、これからの時代の現実的な選択肢です。
継続雇用は、これまで勤めてきた企業に65歳まで雇用を延長してもらう制度です。
高年齢者雇用安定法により、企業は希望者全員を65歳まで雇用する義務があります。
継続雇用は**「収入の安定性」や「生活基盤の確保」を優先したい人**に向いています。
フリーランスは、企業に雇用されず、自ら仕事を受注して収入を得る働き方です。
インターネットの普及や働き方改革の影響で、定年後にフリーランスへ転身する人が増えています。
フリーランスは**「自由な働き方」や「やりたいことへの挑戦」を重視する人**に向いています。
近年注目されているのが、継続雇用とフリーランスを組み合わせた**「ハイブリッド型」**の働き方です。例えば、週3日は継続雇用で安定収入を確保し、残りの時間でフリーランスや副業に挑戦する形です。
この働き方の魅力は、
60歳からの働き方は、「継続雇用」か「フリーランス」の二択ではありません。安定性と自由をバランス良く確保できるハイブリッド型も視野に入れ、自分の価値観・健康状態・資金状況を踏まえて柔軟に選択することが、これからの人生を豊かにする第一歩です。
日本は世界有数の長寿国です。2023年の平均寿命は男性81.1歳、女性87.1歳(厚生労働省「簡易生命表」より)。さらに100歳を超える高齢者は約9万人を超え、半世紀前と比べると桁違いに増えています。つまり、60歳で定年を迎えても、その後の人生は20〜30年という長い期間が残されています。この時間を「余生」として過ごすのか、それとも「第二の人生」として積極的に生きるので、生活の質は大きく変わります。
60代は、子育てや住宅ローンなどの大きな負担が一段落する時期です。その分、自分の時間を自由に使えるようになります。仕事や趣味、学び直しを通じて社会とつながり続けることで、経済的にも精神的にも充実した日々を送ることができます。
充実した第二の人生を送るためには、次の4つの柱をバランス良く整えることが大切です。
将来の生活設計を立てるときは、インフレ率を考慮することが必須です。私は通常、平均シナリオで年2%、リスクシナリオでは年3%を想定して試算します。これにより「今の生活費」ではなく、「将来必要になる生活費」を見据えた現実的な計画が立てられます。
人生100年時代の60歳以降は、まだまだ長く、そして変化に富んだ時間です。資金・スキル・健康・人脈という4つの柱をバランスよく育てることで、安心感と充実感の両方を得られるライフプランを実現できます。
定年後の20〜30年を安心して暮らすためには、生活費・医療費・介護費を含めた長期的な資金計画が欠かせません。特に60歳からは給与収入が減少し、年金や退職金など限られた収入源に依存する時期になります。資金計画を立てずに過ごすと、気付かないうちに貯蓄が減り、将来の生活が不安定になるリスクがあります。
まずは、現在の家計状況を整理し、将来のキャッシュフローを**“見える化”**します。次の項目をリスト化すると、資金計画の全体像がつかみやすくなります。
これを基に、年間の収支バランスや将来の資産推移を試算します。
将来の生活費を試算する際は、インフレ率を考慮することが必須です。私は通常、平均シナリオで年2%、リスクシナリオで年3%を設定して計算します。例えば、現在の生活費が月25万円の場合、20年後には約37万円に増える計算になります(年2%のインフレ想定)。この差を無視すると、将来の資金不足につながります。
継続雇用の場合
フリーランスの場合
資金計画を立てるときは、生活費を必要最低限に抑えすぎないことが大切です。趣味・旅行・学び直しなど、人生を楽しむための支出を計画的に確保しましょう。これにより、計画倒れや生活の満足度低下を防げます。
預貯金だけではインフレに負け、資産価値が目減りします。
次の制度を活用し、インフレ率+1〜2%の運用利回りを目指すことが理想です。
定年後の資金計画は、見える化 → インフレ考慮 → 働き方別収入計画 → 楽しみ予算 → 資産運用の5ステップが基本です。この流れを押さえれば、60歳からの長い人生を安心して楽しむための経済基盤が整います。
60歳で定年後、フリーランスとして働き始めると、まず直面するのが社会保障制度の大きな変化です。会社員時代は厚生年金・健康保険・雇用保険に加入し、病気やケガ、失業時にも一定の保障がありました。しかし、フリーランスになると、これらが国民年金・国民健康保険に切り替わり、保障内容が大幅に薄くなります。
項目 | 会社員(厚生年金・健康保険) | フリーランス(国民年金・国民健康保険) |
年金制度 | 厚生年金+基礎年金 | 国民年金(基礎年金のみ) |
健康保険 | 傷病手当金あり/扶養家族の保険料不要 | 傷病手当金なし・扶養家族も加入・保険料必要 |
失業給付 | 雇用保険の失業給付あり | なし |
保険料 | 会社と折半 | 全額自己負担 |
特に注意すべきは、傷病手当金と失業給付が受けられなくなる点です。病気やケガで働けなくなった場合の生活リスクが格段に高まります。
フリーランスになると、社会保障の不足分を民間保険で補う必要があります。ただし、60歳以降は保険料が高くなり、健康状態によっては加入できない場合もあるため、退職前に見直し・加入を検討しましょう。
退職を機に保険の見直しを行う場合でも、現在加入している保険をすぐ解約するのは危険です。
理由は以下の通りです。
そのため、まずは現在の保険内容を精査し、必要な保障を確保できるかを確認した上で、乗り換えや追加加入を検討しましょう。
フリーランスとして安心して働くためには、
フリーランスになると、会社員時代の社会保障はなくなり、医療・所得・生活のリスクが増します。そのため、退職前から保障の切り替えや保険の補強を計画的に行うことが、安定したセカンドキャリアの基盤になります。
定年後の生活を安定させるためには、「収入を増やす」「支出を見直す」「資産を働かせる」 の3つが基本です。この3つをバランスよく実行することで、限られた収入でも安心して暮らせる家計になります。
継続雇用で安定収入を確保
フリーランス・副業でプラスαの収入
ポイント
収入源を複数持つことで、経済的リスクを分散できる。
特にフリーランスは、1社依存ではなく複数案件を組み合わせるのが理想。
固定費の削減
生活費の最適化
ポイント
無理な節約ではなく、「使わない固定費」を減らすのが長続きのコツ。
インフレに負けない運用
税制優遇制度の活用
ポイント
運用は短期で結果を求めず、長期・分散・積立を基本にする。
キャッシュフロー改善は「攻め」と「守り」の両立が重要
定年後は収入減少が避けられない一方で、医療・介護費などの支出は増える傾向にあります。だからこそ、収入の複線化、固定費の見直し、インフレを考慮した資産運用を組み合わせた総合的なキャッシュフロー改善が不可欠です。
定年後にフリーランスとして働く場合、会社員時代と大きく変わるのが税金の仕組みと資産形成方法です。会社員は給与から自動的に所得税・住民税・社会保険料が天引きされ、年末調整で精算されます。一方、フリーランスは確定申告を自分で行い、節税対策も自己責任になります。しかし、これは逆に言えば、自分で税金をコントロールできるチャンスでもあります。特に、個人事業主ならではの節税制度や資産形成の仕組みを使えば、老後資金の準備と節税を同時に進めることが可能です。
フリーランスの節税の基本が青色申告です。正しい帳簿を作成し、期限内に申告すれば、最大65万円の控除が受けられます。さらに家族を事業に従事させる場合は、専従者給与として経費計上できるため、所得税と住民税の節税効果が大きくなります。
ポイント
フリーランスや小規模事業主向けの退職金制度が小規模企業共済です。掛金は月1,000円〜7万円まで自由に設定でき、全額が所得控除になります。将来は退職金のように受け取れるため、老後資金の積立と節税を同時に実現できます。
ポイント
iDeCoは、老後資金作りと節税を同時に行える制度です。掛金全額が所得控除となり、運用益も非課税。60歳まで引き出せないため確実に老後資金として積み立てられます。
ポイント
NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。特に新NISAは年間投資枠が大幅拡大し、非課税期間が恒久化されました。iDeCoより自由度が高く、途中で引き出しも可能なため、フリーランスの流動資産運用に向いています。
ポイント
国民年金に上乗せできる公的年金制度です。将来の年金額を増やせるだけでなく、掛金全額が所得控除の対象になります。公的制度のため、終身年金として受け取れる安心感があります。
ポイント
節税制度の組み合わせがカギ
フリーランスの老後資金戦略は、小規模企業共済+iDeCo+NISAの組み合わせが基本です。これにより、所得税・住民税の軽減と資産運用による資産形成を同時に実現できます。
フリーランスは、自分でお金の流れをコントロールできる分、節税制度と資産形成制度を上手く使えば、老後資金の心配を大幅に減らせます。特に、小規模企業共済・iDeCo・NISAの3本柱は、60歳からでも十分に活用可能です。
多くの方が定年後の働き方を考えるとき、
しかし、実はこの二択の間にある第三の選択肢として注目されているのが、**「ハイブリッド型」**の働き方です。
ハイブリッド型とは、継続雇用やパートなどの安定収入を得ながら、並行してフリーランスや副業に挑戦する働き方です。
たとえば、
こんな人にハイブリッド型はおすすめ
ハイブリッド型の働き方は、安定性と自由を両立できる現実的な選択肢です。継続雇用で生活の土台を固めつつ、副業やフリーランス活動で自分らしいキャリアを築くことで、定年後の人生をより豊かにすることができます。
かつては60歳の定年を迎えると「余生」というイメージが一般的でしたが、人生100年時代の今、60歳からの20〜30年は「第二の人生」と呼ばれる貴重な時間です。この期間をどう過ごすかで、人生の充実度は大きく変わります。
定年後を楽しむためには、まず経済的不安をなくすことが重要です。
これらを明確にしておくことで、「お金の心配」にとらわれず、自分らしい時間を過ごせます。
仕事や地域活動を通じて社会と関わりを持ち続けることは、心の健康にもつながります。
社会との接点は孤立を防ぎ、生きがいや充実感をもたらします。
定年後は、これまでの制約から解放され、自分の時間を自由に使える時期です。
「今さら」ではなく「今だからこそ」始められることがたくさんあります。
お金があっても、健康を失えば自由に楽しむことはできません。
健康寿命を延ばす努力こそ、定年後の楽しみを最大化する最大の投資です。
60歳からの人生は、自分らしく、そして主体的にデザインできる時間です。安心できる資金計画と健康を基盤に、社会とのつながりを保ち、やりたいことに挑戦することで、人生後半をより豊かで充実したものにできます。「第二の人生の主人公は、他の誰でもないあなた自身」です。
ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格) ・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員 ・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定) ・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) ・宅地建物取引士 ・証券外務員1種
コメントフォーム