相続対策は「分割対策」「納税資金対策」「節税対策」の3つに大別されます。多くの人は相続税を減らす「節税対策」に目を向けがちですが、実は最も重要なのは 「分割対策」 です。分割の準備を怠ると、家族間の話し合いが難航し、兄弟姉妹の関係が壊れる「争続」に発展することも少なくありません。
本記事では、3つの相続対策の基本とそれぞれの特徴、そして分割対策を優先すべき理由を分かりやすく解説します。家族の絆を守り、円満な相続を実現するための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
目次
相続対策とは、単に相続税を減らすことではなく、「家族が円満に財産を受け継ぐための総合的な準備」を指します。大きく分けると、
まず 分割対策 は、財産を「誰に・どのように分けるか」を明確にすることです。特に、不動産の割合が大きい家庭では、分け方次第で親族間のトラブルが発生しやすく、遺言書の有無が大きなポイントになります。
納税資金対策 は、相続税が発生する場合に備え、現金や生命保険などを準備しておくことです。事前に対策しないと、納税資金を確保するために不動産を急いで売却する事態になりかねません。
節税対策 は、生命保険の非課税枠の利用や生前贈与、不動産の活用などを通じて相続税を軽減する方法です。ただし、節税だけを重視すると、肝心の分割がスムーズに進まないケースもあります。
相続対策は、この3つをバランスよく進めることが成功の鍵です。
相続対策の中で最も重要なのが 分割対策 です。
なぜなら、遺産を「誰にどのように分けるか」が明確でないと、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)が難航し、トラブルや訴訟に発展する可能性が高いからです。特に、不動産が相続財産の中心となる家庭では、現金のように簡単に分割できず、兄弟姉妹の関係が壊れる「争続(争う相続)」の原因になりやすいのです。
分割対策の基本は、遺言書の作成 です。被相続人が生前に、誰に何をどの割合で相続させるかを明確にしておけば、相続後のトラブルを大幅に減らせます。また、分割方法を検討する際は、不動産の評価額や換金性、相続税の影響も考慮する必要があります。
具体例として、土地や建物などの不動産が分けにくい場合には、代償分割(不動産を1人が相続し、他の相続人に代償金を払う方法) や、共有持分での分割、あるいは生前の不動産売却などの選択肢も考えられます。
分割対策は、家族の将来の関係性を守るための土台です。節税や納税資金の準備よりもまず、円満な分割を優先することが円滑な相続の第一歩といえるでしょう。
相続税が発生する場合、納税資金の準備は非常に重要です。相続税は原則として現金一括払いが求められるため、相続財産の大半が不動産や株式といった換金しづらい資産で占められていると、納税のために資産を急いで売却せざるを得ない状況が発生します。こうした状況を防ぐためには、事前に納税資金対策を立てることが欠かせません。
具体的な方法としては、生命保険の活用が代表的です。死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」まで非課税となるため、納税資金として効率的に準備できます。また、現金・預金の確保や、相続財産の一部を売却して換金性を高めることも有効な手段です。
一方で、納税資金対策を怠った失敗例も少なくありません。例えば、相続税の支払期限(10か月以内)に間に合わず、やむなく相場より安い価格で不動産を売却したり、金融機関から高利の借入を行うケースがあります。
節税ばかりに目を向け、納税資金の準備を後回しにすると、結果的に家族に大きな負担を残すことになります。相続対策は「納税資金対策」を早めに計画することが成功の鍵です。
相続対策の3本柱のひとつが 節税対策 です。相続税は資産規模によって大きな負担となるため、事前に適切な節税対策を行うことで、残すべき財産を減らさずに家族へ引き継ぐことが可能になります。ただし、節税だけを優先すると、分割トラブルの原因となることもあるため、他の対策とバランスを取ることが重要です。
代表的な節税手法のひとつが 生命保険の非課税枠 の活用です。死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、現金をそのまま残すよりも相続税負担を軽減できます。
また、生前贈与 も有効な手段で、年間110万円の基礎控除を活用し、時間をかけて資産を移転することで課税対象額を減らせます。
さらに、不動産活用 も相続税評価額を下げる有効策です。賃貸アパートやマンションを建築することで土地の評価額を下げ、相続税を抑えられることがあります。ただし、不動産は分割しづらい資産であるため、分割計画を同時に立てることが必要です。
節税対策はメリットが大きい一方で、実行タイミングや手法を誤ると逆効果になることもあります。
相続対策は「分割対策」「納税資金対策」「節税対策」の3つに分かれますが、最も重要なのは 分割対策 です。多くの人は「相続税の節税」を第一に考えがちですが、節税に成功しても、分割方法が定まらなければ家族間の争い、いわゆる「争続」が起こる可能性が高まります。
たとえば、節税のために土地にアパートを建てたとしても、そのアパートを相続人の間でどう分けるかが決まっていなければ、結局はトラブルの原因となります。相続で一度壊れた兄弟姉妹の関係は、取り返しがつかなくなることが多いのです。
分割対策を優先することで、家族の関係を守り、円滑な相続を実現できます。そのためには、遺言書の作成や生前の家族会議を通じて、誰が何を相続するかを明確にすることが重要です。
また、分割対策を基盤としたうえで、納税資金や節税の計画を立てると、全体のバランスが取れた相続対策となります。
家族の絆を守るためにも、まずは「分割対策」が相続成功の第一歩といえるでしょう。
長年相続の現場を見てきた70代のあるベテラン相続アドバイザーは、相続の本質を次のように語っています。
「相続とは、財産を分けること以上に“家族の縁”をどう残すかが大切」ということです。相続で争いが起き、一度壊れた兄弟姉妹の関係は元に戻ることが難しく、晩年にその愚かさを痛感し、後悔の念を抱く人が多いといいます。
このアドバイザーは、相続の「相」は姿や外見を意味し、「続」は続けるを意味すると説明します。つまり相続とは、「その家の良き因(いん)や姿を感謝して次世代へ受け継ぎ、悪しき因は自分の代で断ち切ること」だというのです。財産だけでなく、故人の想いや生き方も次世代に伝えることが、真の相続の目的だといえます。
さらに、「相続は譲った人が幸せになる傾向がある」という教えもあります。これは“振り子の原理”に基づき、与えることで与えられ、譲ることで譲られるという考え方です。相続においても、この精神が円満な解決につながるのです。
相続対策は「財産を残す」ためだけではなく、家族の関係を守り、想いをつなぐための準備でもあります。実際に相続の現場では、財産の分割方法が原因で兄弟姉妹の関係が壊れ、長年にわたって疎遠になってしまう例が少なくありません。こうした争いを避けるためには、早めに相続対策に着手することが重要です。
まず行うべきは、家族全員が納得できる分割対策の明確化です。被相続人が元気なうちに、財産の現状や想いを家族で共有し、必要であれば遺言書を作成しておくことが望ましいでしょう。また、相続税が発生する可能性がある場合は、納税資金の準備や節税対策も計画的に進める必要があります。
後悔のない相続対策とは、財産だけでなく家族の絆を守ることです。家族での対話を重ね、思いやりを基盤とした準備を始めましょう。
相続対策には「分割対策」「納税資金対策」「節税対策」の3つがありますが、最も優先すべきは 分割対策 です。分割がスムーズに決まらなければ、節税に成功しても家族が争う「争続」に発展し、取り返しのつかない溝が生まれてしまいます。相続の本質は、財産だけでなく家族の絆や故人の想いを次世代へつなぐことにあります。
円満な相続を実現するには、被相続人が生前から家族に想いを伝え、遺言書の作成や財産の現状整理を行うことが重要です。さらに、納税資金の準備や節税対策は、分割計画を基盤として考えることで無理なく実行できます。
家族の絆を守り、想いを未来へつなぐために、まずは 「分割対策」から相続準備を始めることが、円満な相続の第一歩となるでしょう。
ファイナンシャルプランナー塩川
・CFP(FP上級資格) ・NPO法人相続アドバイザー協議会 認定会員 ・不動産後見アドバイザー(全国住宅産業協会認定) ・高齢者住まいアドバイザー(職業技能振興会認定) ・宅地建物取引士 ・証券外務員1種
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